「オレは四課なのだ」というプライド
櫻井 (警察の)四課という組織はヤクザを相手にします。「四課はヤクザを相手にするんだ」というのはヤクザの間で浸透していましたから、それが二課や三課になってはダメなんです。私が在籍していた時の課長も「四課ブランド」と言っていました。「オレは四課なのだ」という、四課ブランドで捜査をやるのだということを叩きこまれました。
先ほども言ったように、四課という組織はヤクザが相手であればどんな事件でも捜査するんです。一つ一つの事件にとらわれず、暴力団の取り締まりという目的のために「四課ブランド」を意識する必要があったのだと思います。今後の四課の現場捜査員も、「四課ブランド」の意識は忘れずにやっていってほしいです。
増加する「グレーゾーン」の人間
――1992年の暴力団対策法、2011年までに全国で整備された暴力団排除条例などもあり暴力団は減少傾向にあります。一方で半グレといった不良グループが増加しています。
櫻井 いわゆる暴対法ができたときは各警察署が必死になって取り締まりを強化しました。逮捕しなくても行政命令ができる「中止命令」というのが可能になったので、事件までには至らないケースにも対応できるようになったのです。例えば、用心棒代などで金をとったとなれば「中止命令」で取り締まることができるのです。
近年のヤクザは暴力団排除条例などで携帯を使えない、銀行口座を作れない、ガスも使えないとなっています。締め付けが強いから、構成員になる人は少なくなっています。ただ、反対に潜るヤツはたくさんいます。データ上ではここ10年で暴力団の構成員は3分の1になっていますが、実際に3分の2のヤクザがいなくなったとは限りません。相当な数がグレーゾーンに位置しているのではないでしょうか。
例えば、ヒットマンは捕まったときに構成員だと組の総長まで捜査の手が及んでしまいます。「カタギがやったんだよ」と言えるように、そういった人間はグレーゾーンに置くのです。ヒットマンは極端な例ですが、構成員になると何もできないので、ヤクザと付き合いはあるけれども構成員ではないグレーゾーンの立場の人間が増えているんです。こういったいわゆる「半グレ」対策については四課で強化しています。最近、特に力を入れているのはオレオレ詐欺。アルバイトみたいなのが電話をかけていますが、実態はヤクザが若い連中を使ってやっているのでしょう。ただ、なかなか上のヤクザまでたどり着くことができません。
今のヤクザは名刺を切りませんから、自分で情報を取ってくることがより重要になっています。四課の仕事はまだまだ多いのです。それこそ四課ブランドの矜持をもって現職刑事は取り組まなければならないでしょう。
櫻井裕一/1957年、東京生まれ。1976年、警視庁入庁。組織犯罪対策第四課、渋谷署組対課長代理、新宿署組対課長などを経て2016年から組対四課管理官。2018年退官。