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月島署にも脅迫事件で帳場 

 そこで、渋谷での「発砲事件」は四課の別の班が、所轄の渋谷署に捜査本部を設置し、「指切事件」と連携を取る形となった。表向き、池袋と渋谷の事件はバラバラに捜査を進めているように見せていたが、実際には本部の四課が指揮を執っていたのである。 

「松山のケツを洗え」 

 四課長は、現場の捜査員たちに強烈な発破をかけた。ケツを洗えとは、関連する情報を徹底的に集めることを指す。 

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 その結果、極東会の当時のナンバー2が2013(平成25)年頃、極東会の会合で現場に居合わせた元組員に「破門になった奴が何でいるんだ。出ていけ。ぐずぐず言っていると殺っちまうぞ」と一喝したというネタを、我々は入手することができた。平時であれば、事件にならないような話である。が、我々暴力犯8係が池袋署で始めた事件が、渋谷で銃撃事件に発展。頂上作戦に駆け上がろうとしていた時期だったので、些細な情報でも逃すわけにはいかない。組対四課はこの幹部による脅迫事件の帳場を月島署に設置した。 

ガサ入れで「指2本」 

 渋谷の銃撃事件に世間の注目が向く中、我々の「指切事件」捜査は大詰めを迎えた。実行犯が所属する組へガサをかけたのだ。 

 目当てのモノはすぐに出てきた。 

 組事務所にある冷蔵庫。一般家庭では飲み物だとかが入っているスペースに、もともとは整腸剤か何かが入っていたと思われる小さな薬のビンがあった。フタを開けて見ると、中には、ホルマリン漬けの指が浮かんでいるではないか。 

 シリアルキラーではあるまいし、人の指なんかを取っておくのはおかしいかもしれないが、ヤクザからすれば、ケジメを取った証ということで、大事にとっておいたのだろう。 

 ところが困ったことに、その指とは別に、なんともう1つ、正体不明のホルマリン漬けの指まで出てきた。 

「櫻井係長、指が‥‥2本あるんですけど」 

「なんで2本あるんだ?」 

 警察としては、指が被害者のものであるかどうかが重要なので、しかたなく「2本とも押さえてこい」と捜査員に指示を出した。 

 小指は時間が経つと、皮膚が収縮してシワシワの状態になり、色を失い不気味なほど白くなる。この事件を担当した若い女性検事は、指の写真を見て顔をしかめていた。 

 ふたつの指をDNA鑑定にかけたところ、無事、1本が被害者の組長のものと一致した。もう1本は「違う人間の指」ということになるが、指切事件の捜査本部には必要ないので、“所有者”である組に返すことになった。 

 こうして「指切事件」は物証が挙がり、実行犯6人を全員逮捕することができた。

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