いま、兵庫県芦屋市議会が紛糾している。

 問題の渦中にいるのは、芦屋市の市議・長谷基弘氏(63)だ。公式サイトによると、長谷市議は高校3年生の時に「ネフローゼ症候群」 という病気にかかり、ステロイドホルモン剤を大量に投与。しかし薬の副作用で突然足の自由が奪われてしまったのだという。

 現在は車いすでの生活を余儀なくされているが、「目線が低くなった分だけ、今まで見えなかった物が見えるようになりました」と政治活動を続けている。芦屋市議会にスロープを設置したり、ユニバーサルデザインやバリアフリーの観点から都市計画を進めるよう働きかけたりと尽力している。当選7期目の地元では有名な“車いす議員”だ。

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長谷基弘氏がアップしている写真

 騒動のきっかけとなったのは、5月の市議会。公明党の徳田直彦市議が、長谷市議について「歩けるのを見た」と語ったのだ。(全4回の1回め。#2#3、#4)

「立って歩いた」発言を名誉棄損で刑事告訴

《私は、長谷議員が保健福祉センターで公式行事が終わった後に、乗っていた車いすを御自分で立って、自分のプリウスの後ろのトランクルームに畳んで入れるところも現認しましたし、ほかに幾たびかそういった立って歩いているというところも現認しております》(5月31日の市議会議事録)

 長谷市議は、この徳田市議の発言に対し「差別発言だ」と遺憾の意を表明。趣旨について8月から3度、徳田市議へ質問状を送付した。同月25日、「謝罪がない」といった理由などから、芦屋警察署に名誉毀損容疑で刑事告訴に踏み切った。

 確かに長谷市議のYouTubeチャンネルを見ると、愛車に掴まって足をひきずり、四苦八苦しながら車に乗り込む動画などが残っている。最近も11月27日に、車いすで走行中に転倒し、起き上がれない姿を自撮りした動画をFacebookに投稿するなど、とても普通に歩けるようには見えない。

長谷氏がアップしているYouTube動画

 こうしてみると徳田市議の発言は事実誤認に基づく“障がい者差別発言”のように思われる。しかし、長谷市議が歩く姿を「現認した」という発言は、真っ赤な嘘、というわけではないようなのだ――。