昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2017/12/04

 1「日本人の基準」に気を付ける――「肉の食べ過ぎに注意」の逆説

 先ほど、この章では世界規模の研究と、日本人を対象にした調査を元に、食事とがんの関連性を述べていくと書きました。世界規模の研究結果があるなら、それを日本人に当てはめればいいのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、この分野はそう簡単には行かないのです。 

 たとえば、欧米人を対象とした調査では、赤肉(赤身の肉という意味ではなく、ウシ、ブタ、ヒツジなどの四足の動物の肉)は大腸がんのリスクを高めるという結果が出ています。 

©iStock.com

 しかし、これをそのまま鵜呑みにするのは早計です。なぜならこの調査の対象のほとんどが「欧米人」に限定されているからです。たしかに日本人でも欧米人並みに沢山食べれば、大腸がんのリスクは高くなるという研究結果はありますが、通常、日本人はそれほど肉を食べていないのです。 

 身長と体重から肥満度を算出するBMI(ボディ・マス・インデックス)という指数があります。日本ではこの指数で25を超えると「肥満」と定義していますが、WHO(世界保健機関)では25以上を「過体重」とし、30を超えて初めて「肥満」と呼ぶことになっています。 

 これは、欧米人で「BMI25以上」は決して珍しくなく、アメリカでは70パーセント以上の人がこの範疇に収まってしまうからです。 

 ちなみに日本人でBMIが30を超えるのは全体の3%程度に過ぎません。 

 そんな肥満度や体格、日頃の食生活の違いを度外視して、海外の研究結果を日本人に当てはめるのは、正確性に乏しいだけでなく、逆に健康被害を招きかねないという危険な側面さえ持っているのです。 

 基本的に肥満傾向にあるアメリカ人が肉食を控えたほうがいいのは事実です。彼らが真剣に肥満対策を実践すれば、それだけでがんのリスクは大幅に低下することでしょう。 

 しかし、元々欧米人ほど赤肉を食べていない日本を含むアジア人を対象に研究を進めてみると、逆に積極的に肉を食べている人のほうが、あまり肉を食べない人よりも病気になるリスクが低いという調査結果も出ています。がん以外の病気でも、特に日本人が気にしている血管系の病気において、その傾向が顕著です。