「とんかつソース」は神戸が発祥であることをご存知だろうか。このソースを市販品として最初に開発・販売したのは、神戸に本社を置くオリバーソース株式会社。東京の食べ物であったはずのとんかつ、そのとんかつにかけるソースがなぜ神戸で開発されることになったのか、そしてそれがどう使われ、いかに広まっていったのだろうか。
最初はたこ焼きにかけるソースとして爆発的に売れた
神戸のオリバーソースの本社で出迎えてくれたのは、社長の道満雅彦さん、そのご子息で同社の「とんかつプロジェクト」のプロジェクトリーダー道満龍彦さんのおふたりだ。
まずは「とんかつソース」の始まりについて、社長にお話しいただこう。
「うちが『オリバーとんかつソース』という世界で最初のとんかつソースを1948年に売り出した直後は、もうものすごい勢いで売れてました。それこそ関西一円から神戸までみんな買いに来てましたよ。しかしなんでそんなにとんかつソースが売れたかというと、最初はたこ焼きにかけるソースとして爆発的に売れたんです。とんかつじゃないんです(笑)。まず播州つまり神戸や明石で、たこ焼きにはサラサラなウスターソースではなく、濃厚で粘度の高いとんかつソースをかけるのが食文化として確立されて、次は東へ行って大阪。これはお好み焼きですね。これにもとんかつソースをかけるようになるんです」
なんと、とんかつソースこそがお好み焼きソース・たこ焼きソースの源流だったのだ。ということは、「オリバーとんかつソース」、ひいては東京のとんかつ文化が関西の粉もん文化の一端を担っていたということになる。