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1100店舗のとんかつソースをリサーチした意味とは?

 そして現在も堅調に成長を続けているオリバーソースが次なる一手としたのが「とんかつプロジェクト」なるものだという。今度は同プロジェクトを率いる道満龍彦さんに話を伺おう。

道満龍彦「とんかつプロジェクト」リーダー

「このプロジェクトは3年前にわたしが立ち上げたものです。わたしの入社当時、うちの商品ではお好み焼きソースが好調だったんですが、小さいころからとんかつソース誕生秘話は聞かされていましたし、そういった歴史が今に繋がっていないことへの悔しさもありました。もういちど、とんかつソースはオリバーだよ、というのを発信したいという思いが出発点ですね」

「具体的な活動としては、全国のとんかつ屋の調査などとんかつソースのマーケティングリサーチがひとつの柱です。現時点で1100店以上は調査しました。甘味・塩味・酸味・粘度・色の5項目について、オリバーの『特級とんかつソース』を基準として点数をつけています。こうすることで、たとえば東日本と西日本とではソースの傾向がかなり違うことがはっきりしました。これをもとに全国展開をされているチェーン店さんなどに、東と西とでこういう形でソースを変えたほうがいいですよ、と具体的に提案できるわけです。これらのデータは12月に発行予定の広報紙に掲載予定となっています」

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データは広報誌で報告される

パン粉、油とタッグを組んで挑みたい

 しかし調査、広報と来て、では実際にどうソースを売っていくのか。

「いまスーパーなどのソースの棚は縮小傾向で、消費者向けに飛び込んでいくのはなかなか大変です。今はまず、企業向けを考えています。企業向けの販売には新規立ち上げの際に関わることが大事なんです。あとから店の味を変えてもらうことは難しいですからね。とんかつ関連商材、例えばパン粉や油などですが、それらを扱うメーカーさんなどとタッグを組んで、これからお店を立ち上げる方にそれらをパッケージとしてご提案することなどに取り組んでいます。このやり方は今のところ好評価を得られていまして、新規案件のお話もいただけるようになってきました。これからも一緒にプロジェクトを盛り上げてゆく方は、来る者拒まずの精神でどんどん広げていこうと思っています」

 

 ソース会社ならではの蓄積したデータで具体的な提案をし、関連商材でまとまることでスタートアップのサポートも手厚くできる。過去の広報紙にはワインととんかつの組み合わせを試した結果なども掲載されている。お酒をとんかつ関連商材に新たに組み込むことで、ビジネスチャンスの拡大を狙っているのだろう。なかなかしたたかな戦略だ。

 今では食卓に普通にあるとんかつソース。オリバーソースには、その始まりとこれからとがある。東京から神戸にドロっとしたソースがもたらされ、気前の良すぎる経営者によってその製法が広まった。その拡散したソース文化と共に、オリバーソースはいま再び、とんかつソースの名を自分たちの歴史と結び直そうとしているのだろう。ビジネスとしてどこまで大きくできるか、その歴史と共に注目してみたい。

神戸の工場から、続々とオリバーソースは出荷される

写真=かつとんたろう

INFORMATION

12月9日に「東西ソースダイバー談義」イベントがありますよ!

関西のソース文化をディープに掘り下げた『大阪(+神戸&京都)ソースダイバー』の編集者、島田亘さんらを迎え、東西のソース事情、その文化をたっぷりお話します。

12月9日(土)17時半開場、18時開演(約2時間、途中休憩あり)
Antenna Books & Cafe しばしば舎 (http://shibashibasha.com/
〒333-0851 埼玉県川口市芝新町8ー13

料金:前売り1,300円(当日1,500円)+1ドリンク

登壇者
島田亘:ブリコルール・パブリッシング代表、『大阪(+神戸&京都)ソースダイバー』編集者
かつとんたろう:フリーライター、とんかつ研究家。文春オンラインにてとんかつの話を連載中
司会:小倉美保(しばしば舎)
ゲスト:道満龍彦さん(オリバーソース)、鳩ケ谷ソース焼きうどん