文春オンライン

《近畿連続青酸死事件》「憶えていない」「殺した記憶がない…」都合の悪い話をはぐらかし続けていた筧千佐子が一変…目を見開いて怒りだした“禁断の質問”とは

『全告白 後妻業の女 筧千佐子の正体』より #2

2021/12/24
note

無意識に男の人を味方につけようとしている

「こんなTEGが稀なんです。こんなのはほぼない。本人が外にいいように見えるようにしている、もしくは本人のなかではそう思っていることもある。もし本人が噓をついている自覚がないのなら、そっちのほうが厄介です。共感性がかなり欠けてるんで、自分以外の人間は、自分が生きるための道具であると考えているんでしょう。エゴグラム的にはAだけがあって、あとの感情はほとんどない状態。AだけでP(親)とC(子供)がない。たとえば彼女は葬儀の場面で相手の親族に平気で公正証書を出したりするでしょ。本人は貰って当然だと思ってるから、相手の感情を忖度できない。本当に悪気はないと思います。ただし、交流術については理解し、交流テクニックは持っているので、マメにメールや手紙を出したりする。無意識のうちに男の人を味方につけようとしているんでしょう」

 私はここで千佐子に対して実施した「長谷川式認知症スケール」の結果も見せた。しばらくその内容を見ていた山中医師はぽつりと言った。

「これは認知症とはいえないレベルですね。たしかに当日の年月日と曜日を間違えていますけど、それはカレンダーのない拘置所にいる環境なのでしょうがない。近時記憶は気になりますけど、まだ全然大丈夫な人ですよ」

ADVERTISEMENT

 そこで私は、彼女が「憶えてない」という言葉を多用していることを伝えた。

「『憶えてない』がいちばん強いんですよ。それで話が終わるので、突っ込みようがないでしょ。私自身もそういう人を診察しますけど、こっちにとっていちばん難しい、やる方にとっていちばん簡単という手段で、いちばん厄介なんです」