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カネにまつわる疑惑に激昂

 次に千佐子と面会するまでのあいだに、3通の手紙が届いた。最初に来たのは、差し入れをしておいた菓子類に対するお礼だ。

〈本当にうれしいです。弁ゴ士さんにも、子供も、アメ一個もらったことありません。葉書の一枚も来たことありません。まあ、子供の立場として、あえて、私を死んだ人と思ってるから、それで当然ですけどネ……笑い泣き……シュン。2人の子供に大学やったんですが……シューン〉

 その4日後に書かれた手紙では、差し入れた本についてのお礼が書かれていた。

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©iStock.com

〈プロ。小野一光先生の選んでる本、マジで良い本!! 本をながめるだけで、喜びがこみあげてきます〉

 この手紙の文末は、本を読む喜びの表現に続いて、次のように締められていた。

〈(しつこいとしかられる言葉でごめんなさい。しかられてもOK)一光先生にだったら、しかられたいで~~す〉

©小野一光

 久しぶりとなった21回目の面会は、3月5日だった。1カ月ほど空けているあいだに、どうやって彼女に自分の噓を認めさせるか考えたが、答えは出なかった。その日、千佐子はこれまで私に認めていた、笹井さん(仮名)や山口さん(仮名)の殺害を否定した。

「北山さん(仮名)は病気やろ。笹井さんはいまとなれば、殺したイメージがないねん。宮田さん(仮名)は1000パーセント殺してない。高橋さん(仮名)は殺す理由がない。木内さん(仮名)は殺めてない。おカネすら貰ってない。ガソリン代なんかも私が払ってた。山口さんも殺した記憶がない……」

 彼女は自分が殺したのは橘さん(仮名)だけであるとの主張を繰り返した。話はまたもや振り出しに戻ってしまったのである。

 前日の徒労感が残る3月6日、私は今日こそ千佐子に吉村秀美さんとのことを問いそうと決めた。そして雑談に続いて切り出す。

「あのね、千佐子さん、これ決して責めるわけではないんだけど、僕ね、吉村さんに連絡を入れたのよ。そしたら彼女は健康食品のビジネスもやってないし、千佐子さんからもおカネを出して貰ってないって。それよりも千佐子さんに弁護士費用として300万円を貸したって聞いたよ」