平畠 自分は大阪で生まれて大阪で育ってるんですが、どちらかというと大阪の中でもペースは早くない方なんですよ。大阪の人って何となくせっかちで、いつもセカセカしたり、何かやるときも「はよせいや」みたいなイメージがあるじゃないですか。もちろんそういう人もいっぱいいるけど、僕はその中でもペースが遅いというか、ゆっくりしてる方で。
それに、大阪のコテコテした感じが好きかというと、そうでもないし。阪神も好きじゃなかったですよ(笑)。大阪ってほんま阪神の話ばっかりしてるんですよ。「この人ら、朝からそればっかりやん!」って。
でも、今は大阪に実家もないので、大阪に行くと何となくお客さんのような気持ちになっていて。そうやって距離が出来たからか、やっと大阪おもろいやん、って思えるようになりましたね。
M-1に出たときも、全然緊張しなかった
――1994年のデビューから今年で28年が経ちますが、平畠さんの仕事のスタイルは変わってきましたか。
平畠 銀座の劇場に出てたときも、今やってる静岡のテレビも基本変わらないですよ。「俺のやり方はこれ」って確立もされてないですし。銀座の劇場では、同期はみんな「俺、負けへんよ!」ってギラギラしてたけど、自分は「人を蹴落としてでも」みたいな感じにはならなかったですね。だから、周りから見たら、「あいつら絶対あかんな」「そんなんじゃ、上にいけへんよ」って、思われてたかもしれないです。
だけど、僕はそれよりもお客さんに笑ってもらいたい、喜ばせたい、そのためにはネタをどう作るか……、そんなんばっか、考えてました。だから、今日は銀座の劇場でやります、今日は大阪です、今日はNHKの『爆笑オンエアバトル』ですって言われても、全然変わらなかったです。そうやっていつも通り舞台に出たらチャンピオンになっただけで、毎日の延長でしかなかったですね。
そもそも、今も色々なコンテストがありますけど、基本お笑いに1位も2位もないじゃないですか。あいつよりウケたって言っても比べようがないですし。だからM-1に出たときも、全然緊張してなかったと思いますよ。いつもそんな感じなんです。根拠の無い自信はあるけど、特に「こうなりたい!」とかっていうポリシーもない。とにかく目の前のことをやってきただけですね。
(後編に続く)
平畠啓史(ひらはた・けいじ):
1968年8月14日生まれ。大阪府出身。関西大学卒業後、宝塚ファミリーランドでの勤務を経て、お笑いの道へ。現在は『くさデカ』(テレビ静岡)への出演の他、Jリーグウォッチャーとしてサッカー関連の仕事も数多く担当している。
写真=今井知佑/文藝春秋