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「被害女性が勝ち組に見えた」小田急線刺傷事件の犯人の“歪んだ女性観”にある背景とは

「被害女性が勝ち組に見えた」小田急線刺傷事件の犯人の“歪んだ女性観”にある背景とは

2021/12/30

genre : ニュース, 社会

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過熱する「フェミニスト」嫌い、その一端

 このような記事を書くと、必ずと言っていいほど誹謗中傷のコメントが届く。内容は「クソフェミ」「ツイフェミ」「男の権利を奪おうとしているお仲間(フェミニストではなく“フェミニストを名乗る男性差別者”に関しては私は仲間だと思っていないが)のツイフェミは放置ですか? あんたもフェミなら自浄作用働かせてくれよ」というような、「フェミニスト」という言葉にアレルギー反応を起こす人々による憎悪の感情である。

 女性の権利について意見を書くと毎度必ず現れるので、そこまで存在を気にしてはいないが、少し前に、興味深い経験があった。

 Twitterや5ちゃんねるの他、例えばゲーム実況者のコメント欄、YouTubeのコメント欄からヤフコメなど、匿名性の高い一般ユーザーが様々なプラットフォームに書き込める場所をよく観察していると、「フェミさんが集まってくるぞ」「またフェミが騒ぐぞ」など、“フェミニスト”を貶したり嘲笑するようなコメントが目立っていることに気が付く。これはネット特有の仕草ではあるのだろうと理解はしているものの、ふと、その書き込みをしている彼らの想像する“フェミニスト”とは一体どんな存在なのだろう、と疑問を抱いた。

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 疑問を抱いたきっかけの一例を出すと、「タレントの辻希美さんのブログに突撃してインターネット上で嫌がらせを繰り返す女性たち」を「フェミニスト」だと形容するケースを、なんどもなんども観測したことだ。その話題で盛り上がる掲示板やコメント欄では、その女性たちは「男性に相手をされない容姿の持ち主であり、“女性の幸せ”を掴んだ辻希美への嫉妬で狂っている女たち」だとされていた。おそらく、フェミニストと聞くと「そういう女性たち」をイメージする人々が、世の中には決して少なくないのだろう。

 フェミニズムとは、本来「男女同権主義」に基づいた女性の解放運動や思想であり、「万人が」性別に左右されず、平等に権利を行使できる社会の実現を目指したものである。誤解されやすいのは「フェミニズムは女性優遇を目指すものである」という間違った認識であるが、おそらく世間一般の反応を見る限りでは、女性優遇を唱えたものであるという誤認識が広がっている(あるいは悪意を持ってそう認識している)のだと思う。