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2021年の「言葉」

2021/12/30

genre : ニュース, 社会

 その前提さえ理解していれば、辻希美さんに嫌がらせをくりかえす人々や、憎悪感情による男性の社会的排除を声高に唱える人々はフェミニストではない、ということがすぐにわかるはずなのだから。

「被害女性が勝ち組に見えた」の背景

 昔からの知人男性に、いつか「君はフェミニストなのか」と問われたことがある。彼はジェンダー論や性別による格差について詳しいわけでも、関心を寄せているタイプでもない。そうですよ、と私が返すと、彼は「フェミニズムってそもそもどういうものなのか」と問うので、どういうものだと思っているか、と訊き返すと、やはり「ネット上によくいる、炎上を仕組んでいる人々」だという、まとめサイトなどで得た認識を持っていた。

 そこで、その認識が誤解であることを伝えたうえで「例えば、女性が性別だけを理由に受験を落とされたり、不当に就労を制限されることがあっても良いと思うか」と尋ねると、彼は「それは絶対によくない! 男女差別は僕も反対だ」と言った。「それならば、あなたもフェミニストだと思いますよ」と私が言うと、彼は驚いていたが、すぐに「そうか、じゃあ僕もフェミニストか! 女性しかフェミニストになれないと思っていた、面白い」と知的好奇心を満たされた様子で頷いていた。

小田急線車内で乗客が刃物で切られた事件で、ホームを調べる警察官ら ©時事通信社

 こうした認識の齟齬が社会で分断を生んでいることを思うと残念な気持ちになるが、知人男性のポジティブな反応は、私にとっては少し希望であった。女性が女性であることを理由に差別をされること、性的に搾取されること、危害をくわえられたり殺害されたりすること。すべてあってはならないことである。

「被害女性が勝ち組に見えた」「勝ち組の典型に見えた」「幸せそうな女性を見ると殺してやりたいと思うようになった」と供述する対馬容疑者もまた、女性への歪んだ認識を持ち、女性憎悪を膨らませていたことがうかがえる。

 小田急線刺傷事件は、そんな女性憎悪の象徴とも言える凄惨な「フェミサイド」である。すでに模倣犯が現れているが、これ以上の憎悪型犯罪が増えないことを祈るばかりだ。

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