最初は人集め…「20万円持ち出しになってもいいやつだけ残ってくれ」
当時のXリーグを見ていて、リーグ自体のレベルはわかっていた。
3年あればトップリーグまでは上がれるだろう。そうなれば、ビジネスとして成り立たせることは決してできないことではない――吉野はそんな青写真を描いた。
「まずは仲間を集めました。結局スポーツチームは人なので。関西・関東から仕事で福岡に来ている優秀な選手たちを口説いていって。あとは教え子やライバルチームの優秀だった選手とかにもfacebookでメッセージ送ったりして、どんどん集めて。それで2か月で50人くらい集まった。そこで『じゃあ一回みんなで会おう』となったのがはじまりです。『Xリーグに参戦する』という話をして、『1年間で1000万円くらいかかります』と伝えて。当然ノースポンサーだったので、そこにいた50人に対して、『20万円持ち出しになってもいいやつだけ残ってくれ』と言いました」
そうしてはじまったSUNSは、吉野の計画通り5年間でほとんど負けることなくトップリーグまで上り詰めた。
その原動力となったのは、多彩なキャリアを持ったある種の“イロモノ選手”たちだ。
ブルゾンちえみとともに一世を風靡した「with B」こと芸人のコージ・トクダがいれば、元横浜ベイスターズの田村丈もいる。ラグビーのトップリーガーだった筬島直人選手、黒川ラフィ選手も所属している。
「引き立った個がいるというのは選手のためにもなる」
「話題性というか、アメフト界全体を見てもスターがいない。スポーツチームが広告価値しかない時代ではなくなっているとは思うんですけど、そういった本来の価値から逃げてしまうと、スポーツチームって終わっちゃうと思っていて。チームとして応援したいことはもちろん大事ですけど、引き立った個がいるというのはすごく選手のためにもなる。それは誰かしらを育てるよりは、テレビで活躍してくれていた人が入ってくれた方が、早くチームがワンランク上に行けるなという思惑はありました」
そんなある種の「門外漢」たちが与える影響は、チームにとっても大きいのだという。
「テレビに出る機会が増えたり、報道してもらえたり、取材して頂いたりする回数もものすごく増えました。加えて、所属している選手の意識がものすごく変わりましたね。例えばコージ君なんかは10年ぶりの復帰で、タレントをやりながらという中で、みんなが『本当にできるのか?』という目で見ているわけです。そんな中で彼は練習を頑張って、自分から声を出してくれたりした。彼を見て、みんなが『彼をちゃんと引き立たせないといけない』という想いや『彼に負けちゃいけない』みたいな考えが芽生えてきたんじゃないかと思います。
本人たちもものすごく結果にこだわっている。言い方はよくないかもしれませんが、周りに後ろ指を差されながら、『本当にできるの?』みたいな懐疑的な視線も感じながら、バカにされながら、いろんな思いを抱えていたりする。だからこそ、彼らは試合の結果にはものすごくこだわりをもっている。そこはアマチュアでやっている他の選手とは覚悟が違うのかなとは感じますね」