「競技団体を興行団体に変えていかないといけない」
そういったチームへのプラスはもちろんあるが、ここにも吉野のリアリズムが垣間見える。彼らのようなある種の“飛び道具”を使うことで、結果の面だけではないスポーツやチームの魅力をアピールしようとしているのだ。
「いまの日本アメフト界は、各チームが日本一になるためだけに頑張っているという、大人の高校野球みたいな状況です。我々はそういうチームは目指していない。もともとそんなに大きなスポンサーがいたわけではないですし、あくまでも応援や支援があって成り立つ組織です。我々の活動そのものや、試合の結果が周囲にいい影響を与えていけばいい。そういうことから競技団体を興行団体に変えていかないといけない。それが、福岡SUNSがアメリカンフットボール界全体に対してやらないといけないミッションだと思っています」
結果を求めるのは決して悪いことではない。
ただ、スポーツの価値はそれだけではない。多くのチームが単純な「日本一」というトロフィーを目指しているが、そこにどんな価値をつけられるのか。
逆に言えば、そのプロセスにしっかりとした価値が付与できれば、今の時代のスポーツチームは必ずしも試合に勝ち続ける必要はないのかもしれない。
試合をやることが儲かることにならないといけない
「とにかく試合をやることが『儲かること』にしないと、スポーツとして衰退してしまうと思っています。いまのXリーグでは、勝ち上がれば勝ち上がるほど費用がかかり、優勝賞金等も特にないような状況です。なんとかそれを1試合ごとに興行として成功させて、試合をやれば数百万円が儲かる。そしてそのお金がチームの運営費や強化費になる。そういう仕組みづくりをしていかないといけないと思っています」
吉野はそんな風に笑顔で語ってくれた。
今後の目標を聞くと、そこも実にシンプルだ。
「まずは集客が一番ですね。言ったように、トップリーグに上がったからと言って、日本一なんてすぐには目指せないわけで。どこのチームよりも集客力のあるチームを目指すべきかなと思っています。トップリーグに上がると色んなメディアも使えます。少なくとも、いま『アメフトファンだ』と言っている人たちが、全員SUNSの試合を見に来るくらいにはしたいと思っています」
そう話す吉野の視線は、夢ではなく目の前のリアルを捉えているように見えた。
実際に今季の観客動員数は、SUNSの最終戦が1位だったという。