先日、大阪の新生児科医•小児科医である今西洋介氏(マンガ『コウノドリ』に登場する今橋先生のモデル)と雑談していた際にも、「アトピーや障がいを持つ子供たちの母親の話を聞くと、ほとんどの人が自分を責めている」という話が出てきました。障がいや病気を持つ子供たちの親からよく出る「健康に産んであげられなくて申し訳ない」という言葉も、まさにその現れでしょう。
そんな環境の中こんなデマを吹き込まれれば、母親たちの不安はあっという間に臨界突破。
「妊娠中に不摂生したことが、子供の病気や障がいの原因」
「母体に農薬や添加物がたまっていたから、子供がアトピーになった」
2015年には過激自然派として知られる医師が「障がいの子どもが生まれるのは、いかに産む前妊娠前に両親の食と生活が乱れているかの証。それは一生かけて反省しなければならぬ」とFacebookへ書き込み、炎上した出来事もありました。この件には反論が相次ぎましたが、巷に似たような言説は山ほどあり、根拠はなくとも「万が一」と不安を覚えるでしょう。
こうしたデマは、既に医学的に否定されていたり、使い古された都市伝説であることが圧倒的に多いものの、少子化の今、妊婦及び新米ママたちにとっては未知との遭遇です。
「妊娠・出産は自然なほうがいい」「便利なものを使っているとツケがくる」という誤解
SNSなどで発信される、成功体験も曲者です。「オーガニック食で不妊が解決した!」「自然素材の靴下を重ね履きして体の毒を出し自然な生活を送ったら、不育症を乗り越え出産!」同じ悩みを持つ人は、藁だと薄々感じながらも、つかんでしまいそう。
そこまで極端な言説に遭遇しなくても、「妊娠出産は自然なほうがいい」というイメージが一部社会通念としてあることも関係しているでしょう。さらに病院や公的機関で嫌な思いをしたので民間の支援に頼った結果、それがたまたま反医療だったり自然派だというケースも。総じてそうした場所は心情によりそってくれたり、欲しい言葉を浴びせてくれたり、美しい物語で演出されたりしています。そこに救いや癒しを感じれば、当然自然派へと傾倒していきます。
自然派になるきっかけは、まだまだあります。育児界に巣くう「便利なものを使っているとツケがくる」という脅しです。それらは最新の研究によって開発された今どきのベビーキャリー(代表例エルゴ)や使い捨ての紙オムツ、楽に与えらえるベビーフード。子供向けのコンテンツが手軽に手に入るスマホも、狙い撃ちされています。
「子供の発達を妨げるから要注意!」
「化学調味料や添加物、化学物質が、病気の原因」
「だから昔ながらの『自然』であることが、子供にとって一番いい!」
と、一部で発信されています。