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2021/12/23

熱心に調べるほどトンデモ度の高い情報に遭遇する

 自然派になった結果反ワクチンになるルートもありますが、その逆も存在します。ワクチンに不安を覚えたことが、自然派への入り口となるケースです。子供が生まれると、生後2カ月から1歳までの間に打つワクチンは、6~7種類。摂取回数は15回以上。正直私も、はじめてわが子をワクチン接種に連れていった時は、かなりビビりました。「こんなふにゃふにゃの小さな体に打って大丈夫なんか……!?」という感覚的な恐怖です。

※写真はイメージです ©iStock.com

 ここで〈ワクチン 危険性〉と調べれば、高確率で沼入りです。調べれば調べるほど、トンデモと呼べる類の情報の渦に飲まれ、反医療をベースとした自然派沼へと取り込まれていくでしょう。

 子供をよりよく育てたいという親心と、何かあったら自分の責任、そして絶対死なせてはならんという重圧。ただでさえ産後は疲労とホルモンの影響がハンパありませんから、脳はまともに動かず冷静な判断が難しい状況です。トンデモ度の高いものほど、何かを強く分かりやすく断言するので、産後の朦朧とした状態へはスポンジに水。ぎゅわ―んと吸収されていきます。

 根拠の怪しいものを信じる人を批判する「義務教育の敗北」なんて揶揄がありますが、無知だから根拠のない言説に引っかかるだけではありません。不安と疲労をナメてはいかんのです。しかも今のネット社会では熱心に調べるほどにトンデモ情報に出会うのが定石。汚染されてるのは食品や日用品ではなく情報のほうなのですが、疲れと子供の未来という大義名分の前には、それが見えにくくなってしまうのです。

 自然派ママのヒエラルキー上位にいるのは、「自然なお産」を選んだ人たちです。「自然なお産」とは医療が極力介入しない助産院での分娩や自宅出産のこと。一部、水中出産などエクストリームな技もあります。こうしたお産は「宇宙と一体になる感動を味わえる」「女性性が開花する」など、過度に神聖視されるのが特徴です。

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 病院での分娩が不満だった経験からや、親が自然なお産をしたからという自然派2世であることが動機となる人もいますが、一部では自己肯定感の低さや生きづらさを抱えているという話も耳にします。そうした人いとっては自然なお産が、ワンステージ上の高みを目指せる、一発逆転のチャンスとなるようです(といっても自然派の中でしか通じない価値観ですが)。自然なお産で健康な子供を産むことができれば、その達成感はさぞかし壮大で、自己肯定感も爆上がりでしょう。