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 母親に限定した話以外では、災害がきっかけで自然派となるのもよく知られたパターンです。東日本大震災ではそこから発生した原子力発電所事故によって放射能が、コロナ禍ではウイルスが恐怖の対象となり「健康は自分の手で守らねば」と自然派入り。「免疫力を高める」食事やら健康法は、総じて自然を謳いますので。自然派は現代社会を否定する立場であるので、社会への怒り・不満の表現として選ぶ人もいるでしょう。

自然派ママは「ヤバい人」で片付けてはいけない

 ここまでの話で、怪しい情報へ積極的にアクセスしなければ安全だと思うでしょうか? ところが自然派となる入り口は、育児出産周りには無数に存在しています。自覚がないまま、既に1歩踏みこんでいるかもしれません。周りを自然派に包囲されているかもしれません。

 よく聞く話は、育児サークルが自然派の巣窟であったというケースです。ある主婦の話では、住んでいる地域のママ友コミュニティのほとんどが10~20代中心でなじめず、かろうじて見つけた30~40代の母親たちのサークルに所属するとそこは自然派の集まりだったとか。自治体のイベント情報に掲載されている「食育や免疫の勉強をしませんか」と呼びかけるママ向けセミナーの案内が、主催が医療デマを発信しているネットワークビジネス団体だった例も。

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 公共施設や公園でのマルシェイベントや体験イベントなどにも、ネットワークビジネス団体や自然派ママサークルの出店が多数出没。ほかにも助産師や保健師の指導、ベビーマッサージ、SNS、ナチュラル系カフェ等々……カジュアルにハードル低く大量にちりばめられているのです。公を利用したものが多数あるため、安心感は言わずもがな。まさに悩める母ホイホイ、脅し系ビジネス百鬼夜行状態です。

※写真はイメージです ©iStock.com

 自然派ママの問題点はワクチンの件でも明らかなとおり、適切な医療や支援から遠ざけられること。自然派の根底には「弱いものは自然淘汰される」「宇宙の意思」などの運命論があり、それでザックリ片付けられてしまうのが原因のひとつです。自分の意志でなく、親に従うしかない子供の場合は悲惨としか言いようがありません。

 ところが自然派ママの多くは子供そして家族のためにという思いからの選択なので、情緒的に否定しにくいのが困りもの。そのうえ一般には理解されにくいのでコミュニティは閉鎖的になり、かつフラットで冷静な情報が少ないため声の大きいカルト系との接触機会が増えていきます。

 不安につけこむビジネスはあらゆるジャンルに存在しますが、自然派育児情報はなんと「悩める母ビジネス」が多いことか。イデオロギーや宗教で自然派を実践しているケースもありますが、それを除く一般の親たちの自然派傾倒は、悩みや苦しみの表れであることが多いのでしょう。自然派ママ当事者や家族の人の話を聞くにつれ「ヤバい人」で片付けてはいけないと、感じさせられるのです。

 あなたの周りの自然派ママは、どうでしょうか?