「皇室外交」もオンラインで?
新型コロナの感染拡大によって、人々と天皇・皇族の関係は大きく変化した。直接訪問できる機会が減った分、オンラインでの交流が増えた。これはたしかに、短時間に日本の各地とげることも出来、便利な側面もあるだろう。病気の皇后にとっても、現地を訪問するよりは負担も少ないものと思われる。直接訪問の代替として、人々と天皇皇后が同じ時間を共有する機会を得たことは大きな意味があるだろう。
しかし、オンラインが式典などの出席を含めてやや形式的になっていることも事実である。直接訪問では、それ以外の部分での人々との交流が「実」であった。今後、オンラインを活かしながら、この「実」をどのように獲得するのか、そうした新しい活用方法を模索する必要がある。そして、オンラインによる人々と天皇皇后の交流の、見せ方も工夫すべきだろう。
また、オリンピックによって国際親善も復活したが、以前のように天皇皇后が各国を訪問したり、要人が日本を訪問したりするようになるのは、まだまだ先ではないか。そうすると、いわゆる「皇室外交」もオンラインで、という可能性も出てくるだろう。ここでも国内の問題と同じような課題は浮上してくる。
物理的に不可能な部分を、精神面でどうカバーするのか。今後の皇室に与えられた課題だろう。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2022年の論点100』に掲載されています。