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「最近は広告に大きな責任を負わせすぎだと思う」カレーメシやUQUEENのCMディレクター・佐藤渉が“いい子”なCMを作らない理由

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 ディレクターの仕事は、その企画コンテをもとに、より詳しいコマ割りを決める演出コンテを描くのがメインです。セリフやロケーション、アングル、音の構成、キャスティングの方向性などを決めて、それをもとにスタッフィングやロケハン、キャストのオーディション、美術制作が進みます。その後は、撮影や編集まで立ち会って仕上げていきます。映画に例えるなら、広告会社のクリエイティブチームが脚本家で、僕が監督のような立場。クライアントや広告会社の漠然としたイメージを具体的な映像に落とし込んでいくことが仕事です。

「商品から漂う空気感みたいなものをCMで」

――制作していく上で、最も大変なのはどの作業ですか。

佐藤 演出コンテを描くときですね。CMの設計図になるものなので、最も時間をかける作業です。完成したコンテを翌日見ると粗が見つかったりするので、何日も寝かせて見直すようにしています。あと、撮影では素材をなるべくたくさん引き出すことを心がけていますね。そうやって面白さの可能性を広げて、編集で最良の組み合わせを探っています。

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日清食品 日清カレーメシ 「お米がうまい」篇

――どんな風に演出を考えているのでしょうか。

佐藤 コンテを描く前に、まずは企画を見直すところから始めます。スタート地点に戻って、CMを打つ狙いや、誰にどういう影響を与えたいのかを考えることで、ブレがなく精度の高い演出ができるんです。肩書きはCMディレクターですが、ただ演出をする人ではなく、もっと深く責任を持ってそのCMに関わっていたいので、CM作家のような立場だと思って参加しています。

 僕に来るオファーはほとんどコメディですが、大切にしているのは、商品をCMのど真ん中に置いて、商品から逃げないこと。商品を主役にして、その商品から漂う空気感みたいなものをCMで感じさせられたらいいなと思っています。商品ど真ん中という軸をぶらさずに、いかに今までにない手法で視聴者を振り向かせられるかということをテーマにしています。