カベを突き破って颯爽と現れる「カレーメシくん」に、「本ねぇ~じゃん!」と絶叫する寺田心。小澤征悦が物憂げな顔でグミを噛みちぎり、女王に扮した満島ひかりはスマホ料金を高らかにアピールする――。
株式会社TYOのCMディレクター・佐藤渉さんが演出するCMは、どれも独創的で“カオス”なものばかりだ。SNSでも話題になるヒットCMを連発するヒットメーカーは、一体どんな人物なのか。CMの制作過程から人を惹きつける作品作りのコツまで、佐藤さん本人に話を聞いた。
UQUEENシリーズやカレーメシ
――最近は、テレビをつけると佐藤さんの演出したCMを見ない日がありません。どのくらいの数のCMを作られているのでしょう?
佐藤渉さん(以下、佐藤) 今は満島ひかりさんと松田龍平さんが共演しているUQモバイルの『UQUEEN』シリーズをはじめ、チョコレートプラネットさんを起用した日清食品『これ絶対うまいやつ!』、ザコシショウさん出演のシュールな『カレーメシ』、5人の俳優が兄弟を演じるジャンボ宝くじシリーズなどが同時並行で放映されています。1つの案件でいくつかバリエーションを作るものも含めると、年間で50本以上は手掛けていると思います。
――佐藤さんがつくるCMはシュールで奇抜な世界観の作品が多いですが、すべて佐藤さんが発案しているのでしょうか。
佐藤 そんなことはないです。僕が発案することもありますが、発注の段階でクライアントや広告会社から“カオス”な感じを求められる場合もあります。たとえば日清さんだと、『カレーメシ』で初めてお仕事をしたときに僕の感性みたいなものを気に入っていただけたようで、今は最初からカオスな世界観をオーダーされる案件が多いです。自分の感性で好きな世界観を描くことと、目立つものを作らないと意味がないという思いを突き詰めた結果、そういう表現に辿り着いたんだと思います。
――そもそも、CMディレクターとはどんなお仕事なのか教えてください。
佐藤 制作過程としては、まずクライアントから広告会社に商品やサービスに関するオリエンテーションがあって、それを受けてプランナーやコピーライターがCMの企画コンテを作ります。コンテと一口に言っても、10コマぐらい書き込まれているものから、大まかなイメージだけの一枚絵まで形は様々です。