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普通の「医療保険」と「がん保険」、正直どちらがおすすめですか?

FP(ファイナンシャル・プランナー)の黒田尚子さんインタビュー#3

2017/12/19
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「医療費控除」と「セルフメディケーション税制」、選べるのはどちらか一つです

──この頃「セルフメディケーション税制」という言葉を耳にしますが、どういうコンセプトなんでしょうか。

黒田 セルフメディケーションとは、日頃から健康管理に気をつけ、ちょっとしたケガや病気は自分で(市販の薬などで)治そうという考え方ですね。「セルフメディケーション税制」とは、一定のスイッチOTC薬(市販薬)の購入金額が年額12,000円を超えると確定申告で税金の還付が受けられる制度です。従来の医療費控除では1年間にかかった医療費が10万円を超えないと医療費控除が受けられませんでしたが、がん治療も年数が経過してくると、そんなに医療費がかからなくなってきます。いずれにしても、「医療費控除」「セルフメディケーション税制」はどちらか一つしか選べませんので、どちらが得になるか、ご自分で計算して判断してください。

──医療費控除は関係ないからといって、レシートは捨てない方がいいですね。

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黒田 そうそう。平成29年度分以降の確定申告からは、医療費控除も領収書やレシートの添付が不要になりますが、医療費控除を受けたら5年間は領収書やレシートを自宅で保存する必要がありますので、捨てずに取っておいてくださいね。

 高額療養費制度など、ほかにも領収書やレシートが必要な場合もありますので、コピー可のところはできるだけコピーで申請し、原本は手元に持っておくことをおすすめします。原本を提出しないといけない場合は、コピーを取っておきましょう。

これからは「おひとりさま」のがんも増えてくる

──結局、がん治療にいくらかけるかも、いくら助成金や保険料がもらえるかも、自分次第ということなんですね。

黒田 そうなんですよ。がんと診断された時にどんな治療を受けたいかでも異なりますし、どうありたいかは個々に違いますから、いくら必要かは「あなた次第」ということになります。公的保障と自助努力としての貯蓄や民間保険を備えつつ、一生懸命働きながら、日々の健康にも気を使うなど、セイフティネットを幾重にもしておくことも大事です。特に、これからは「おひとりさま」のがんも増えてくると思います。

 女性の場合は、ご近所付き合いや友だちとのランチなど、適度なコミュニケーションを取る方が多いですが、男性の場合は、調子が悪くなるとカッコ悪い姿を見られたくないからと殻に閉じこもるケースも少なくありません。「カネ」や「モノ」以外に「ヒト」や「情報」も病気の際の重要な資源だということを肝に銘じて、社会とつながりを断たないようにはしたいですね。

 
INFORMATION

がんとお金に役立つサイト
がん対策情報センター

がん制度ドック(NPO法人がんと暮らしを考える会)

写真=杉山秀樹/文藝春秋

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