「別の地平から見てきた言葉」「世論は間違っている」
とびっきり「わきまえた」女性と思われる丸川珠代五輪相(当時)の、「全く別の地平から見てきた言葉」も、東京オリンピック関連で気になった言葉のひとつです。
新型コロナ対策で助言を行ってきた政府分科会の尾身茂会長が、わざわざパンデミック下で五輪を行う意義について疑問を呈したことを受け、丸川氏が会見で放った言葉が以下でした。
我々はスポーツの持つ力を信じて今までやってきた。全く別の地平から見てきた言葉をそのまま言ってもなかなか通じづらい。(朝日新聞デジタル 2021年6月4日)
「スポーツの力」という“みんなをひとつに”的キーワードを使うわりには、「別の地平」と、いとも簡単にコミュニケーションを放棄する。
その後、今度は国際パラリンピック委員会の人も「《パラリンピックの中》と《外の社会》はまったく関係がない」と言い放っていて、腰を抜かしました。
「別の地平」で起きた、社会と断絶した祭典……。関係者自ら、東京オリンピック・パラリンピックは「秘密結社の奇祭」と言っているようでした。
さらに医療が逼迫する中での大会開催に不安を覚える人々の声に対し、慶大名誉教授の竹中平蔵氏が放った「世論が間違っている」発言も、忘れられない、強烈な一言です。
こういったトンデモ発言を繰り返してきた国に対し、私も最近、声を上げました。2023年10月から実施が予定されている、インボイス制度の廃止を求める運動です。
今年はじめて、というか人生ではじめて社会活動をし、記者会見もしました。省庁に足を運び、国会議員や地方議員といった政治家の人ともはじめて話をしました。彼らからしたら私は、わきまえない女かもしれません。
そんな活動の中で、財務省に行くことがありました。「社会見学!」とばかりにあれこれをじっとり見てきたのですが、公務員の人も、出入りしているマスコミや企業の人も、老若男女、ジャケット姿。
パリッとした衣服に身を包み、築80年の歴史を持つ素晴らしい建築物の中で、取り扱うは市民の暮らしを左右する国家案件。赤いカーペットが敷かれた、今にもお姫様が降りてきそうなすばらしい階段の途中で立ち止まり、ここが「日常」となっている人々の気持ちを想像しました。
かたや私はいつもオーバーオールにトレーナーで、出勤の必要がないフリーランス。東京のはしっこのマンションが私のオフィスであり、子どもの遊び場であり、家族の寝床。私と彼らの生活はまるで違って、「別の地平」のようだと思いました。