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「ルールを守ってください」と取材中、いら立ちをあらわに…菅義偉前首相に怒られた記者の“まっとう過ぎる言い分”

2021/12/28

 2021年の言葉。いろいろありましたが、これを忘れちゃいけない。

「ルールを守ってください」(菅義偉)

 7月21日に菅義偉首相(当時)が記者に放った言葉だ。このときの記事を振り返ろう。

菅義偉 ©文藝春秋

『首相、記者団の取材にいら立ち 立て続け質問、注意促す』(7月21日共同通信)

《菅義偉首相は21日、官邸で記者団の取材に応じた際、社名を名乗らず立て続けに質問しようとした記者を「ルールを守ってください」と遮り、後方で控えていた小野日子内閣広報官らに「はっきり言ってください」と注意を促すなど、いら立ちをあらわにした。》

 菅氏の激おこは続いたようで、《首相は取材を終えて官邸を出る際、秘書官に向かって叱責するなど怒りが収まらない様子だった。》

 すごい剣幕です。

 では菅氏を怒らせた記者はそんなに非礼な態度だったのか。当事者である澤田大樹記者(TBSラジオ)は最近出版した著作の中で振り返っている。

TBSラジオ記者の“言い分”

 当日は東京のコロナ感染者数が1832人。これだけ感染者が増える中で五輪・パラリンピックを開催することで国民の生命を本当に守れるのかと質問をした。引き続き名前を名乗って「バブル方式」が機能していない点を問うた。しかし首相はきちんと質問に答えない。そこで更問い(※)で畳みかけた。

※さらとい。質問の答えに対して更に質問を行うこと。

菅首相に「更問い」をしたTBSラジオ・澤田記者の著書『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』(亜紀書房)

「(首相の言っていたことと現実が)異なっていることはお認めになるということですか?」

 すると、

「ちょっと、ルールを守ってください」といらだったように首相は言った。

《私は首相の回答が不十分だったため更問いをしたのだが、すでに首相と目が合っていたので、3回目のときには社名と名前を名乗らなかった。そのため「ルールを守れ」と言われたのだ。》(『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』亜紀書房)

 これを読むと菅氏の「ルールを守ってください」はただの言いがかりにしか思えない。何も答えず逃げるためにとんちんかんな脅しを放っただけだ。