東京にはもう“一流”はこない――。
マーケティングアナリストの原田曜平氏は、日本の置かれた現状について、そう断言する。高度経済成長期以降、先進国として世界から認められてきた日本だが、なぜこれからの東京に“一流”がくることはないのだろうか。
ここでは同氏の著書『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)の一部を抜粋。世界から見た日本のイメージを紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)
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日本のインバウンドはまだあまりに少なすぎる
東京は世界の国際的大都市と比較したうえでも、特にミレニアル世代・Z世代の若者にとっては、抜群の「居心地」を備えています。しかしその優位性が諸外国のミレニアル世代・Z世代に十分に伝わっているかというと、そうではないというのが実情ではないでしょうか。
ひとつの指標がインバウンド、訪日外国人の数です。
たしかに訪日外国人の数は年々増えていて、日本政府観光局(JNTO)の発表統計によれば、コロナ前の2018年は3119万1856人。3年前の2015年には2000万人に満たず、2012年以前は1000万人にも満たなかったことを考えると、順調に大幅に増加してきたように見えると思います(図3-1)。
政府は東京オリンピックが開催されるはずだった2020年に訪日外国人数を4000万人にまで押し上げるという目標を掲げていましたが、恐らくコロナがなければ、この目標は達成されていたでしょう。
そんな日本のインバウンドが東京に支えられてきたのは明らかです。2019年で見ると、訪日外国人3188万人のうち、東京を訪れたのは1506万人(観光庁のデータより)でした。訪日外国人の約47%、実に半分近くが「東京を目的に来日」しているわけです。「日本のインバウンドは東京が牽引(けんいん)している」のです。
それらを踏まえた上で申し上げましょう。東京の観光客の数は、前述した東京の魅力からすればあまりに少なすぎる。特に欧米からの観光客はかなり少ないと言わざるをえません。
表3-2は2017年のデータとなりますが、市場調査会社ユーロモニターインターナショナルの外国人訪問者数でみた世界の都市上位100都市によると、訪問者数1位は香港、2位がバンコク、3位はロンドンで東京は残念ながらベスト10入りせず、14位という結果となりました。