訪日外国人はどの国から来ているのか
インバウンドが増加してきたのは事実ですが、人口や土地の規模や国力、そして前述した東京の魅力から考えると、あまりに低すぎる結果と言わざるをえません。
訪日外国人の国籍別内訳(2019年/JNTO)を見てみましょう。1位は中国の30%、2位は韓国の17・5%、3位は台湾の15・3%、4位は香港の7・2%。つまり、東アジアのたった4カ国で70%も占めています(図3-3)。アジア全体だと実に84・1%。要は、ほとんど超近郊の東アジア、全体で見ても近場のアジアからしかインバウンドを呼び込めていないというのが実情なのです。
「あれ? 東京は物価がすごく高いと思っていたけど…」
しかし『GIRLS』のショシャンナが日本に魅了されていたように、距離の遠い欧米諸国のミレニアル世代・Z世代も、東京の居心地の良さを満喫してくれるはずです。
10年、20年前、東京の物価は欧米人からしても、「高い!」ものでした。それがいつの間にか、「え? アメリカで良い寿司屋に行ったらひとり5万円はかかるのに、日本では最高級の店でも2、3万円なの?」といった状況になっています。この数年、東京のお寿司の値段は物価に比して値上がりしてきましたが、それでも海外先進国の人からすると決して高くはないわけで、結果、コロナ前まで銀座の高級寿司屋に外国人の予約が殺到していたわけです。
経済成長が目覚ましいアジア諸国も追随しています。日本との経済格差が縮まってきている分、「あれ? 東京はすごく高いと思っていたけど、そこそこだね」「え! 意外と安いじゃん、東京」と感じるアジアの中間層・富裕層が増えてきているのです。
コロナ前までのインバウンドの増加を「東京オリンピック開催が決まり、注目が集まっているから」と説明する論調もありますが、これはまったくの的外れです。ロンドンやリオで開催されたからといって、その数年前にイギリスやブラジルに行く日本人観光客が大幅に増えたでしょうか? そんなことはありませんよね。
日本人が物価の安い東南アジアに行くように、豊かになってきた東アジアの人が近さと安さと楽しみを求めて日本に来るようになっただけです。それくらい日本は安い国となっており、アジア各国は経済成長しているのです。我々はまずその現状を認識しなくてはなりませんし、逆にこのピンチをチャンスに変えていく発想を持つ必要があります。