12月12日、滋賀県で篠原聖奈さん(当時19)が薬物中毒で亡くなった。篠原さんが倒れていたアパートからは、100錠程度の薬の空き殻が見つかっている。彼女たちは “オーバードーズの会”を定期的に開いていたという。
「明日は我が身」経験した患者によるボヤ騒ぎ
「オーバードーズの方は増えていますよ。自分で飲みすぎてしまう人もいれば、明らかな転売目的の人もいます。病院に来るたびに『薬を掃除していたら捨ててしまった』『バスに置き忘れた』とか理由をつけてもらおうとするんです。特に生活保護の患者さんだと、薬は無料ですから。インターネット上にはこの病院は薬をたくさんもらえる、この先生はもらいやすいみたいな裏掲示板もあるんです。
幻聴、幻覚の症状が出てしまっている人もいるので、患者さん同士でのトラブルも絶えません。もちろんある程度は仕方ないことです。ただ、しっかり前を向こうとして治療に向き合う患者さんがたくさんいるなかで、心ない患者さんや、言いなりになってしまう先生がいるのは事実です」(同前)
実際にこんなトラブルも起こっているという。
「実はうちの病院でも過去に患者さんによる小火騒ぎがありました。大事には至りませんでしたが『患者に逆恨みされて火でもつけられたら怖いね』なんて同僚と話していたんです。そんななかで北新地の放火事件があって……。明日は我が身という思いで、本当に怖いです」(同前)
精神医療の現場に詳しく「ブラック精神医療」(扶桑社)などの著書もある米田倫康氏は、今回の北新地の放火事件について「行政の欠陥から、クリニックに過度な負担がかかっていた可能性がある」と指摘する。
「心療内科・精神科クリニックは各地に乱立しており、行政機関がそれをひとつひとつチェックできていないのが現状です。かつては1日に1人の医師が300人診ていたケースもありました。現在は『5分縛り』というルールがあって、1人の患者の診療にあてる最低時間が決まっていますが、これも短すぎる。
患者側も本当は働けるのに働かずに手当をもらうために診断書を求めるケースがありますが、こういった不正をたくさんの患者を抱える先生が1人で見抜くのは困難です。かつては障害者手帳を入手するためのマニュアルが出回る組織犯罪もありました」