「谷本容疑者がいわゆる“精神科受診難民(複数の病院に通う人のこと)”だったという報道もあります。事件現場の院長が患者思いで人が集まっていたのかもしれないが、過度な負担がかかっていた可能性もあるでしょうね。
他にも、診断書が各医師のさじ加減次第であることなど、精神科行政にはさまざまな欠陥があり、見直すべき時に来ているのではないでしょうか」(米田氏)
「親から通院をやめろと…」広がる精神科への偏見
こうした事件をきっかけに注目を集める精神科の構造的な問題。それに伴って、患者の不安も増している。前出の益田院長は「精神科について、偏見が強まるのではないかといった不安を抱えている人がいます」とも語っていた。
「事件を受けて、クリニックへ通う患者さんのなかには不安定になっている人もいます。中には『親から通院をやめろと言われたけど、薬がなくなったら困る』という相談もありました。患者さんに言っているのは『事件や自死はあることなので、大丈夫ですよ。動揺するのも落ち込むのも当然のことです』と声をかけて寄り添っています。トラブルはありますが、大多数の患者さんはなんとかいまの状態を脱するために頑張っている真面目な方です」
そんな人々が医療から遠ざけられることがあってはならない。益田院長はこうした取り組みを行っているという。
「私が1ヶ月でみている患者さんは約900人いるのですが、関わる人を増やすことでチームによる解決を目指しています。例えばマイナスのイメージが持たれる生活保護ですが、申請をするとケースワーカーも患者さんと接するようになる。そうすればもっと総合的で丁寧な治療ができるはずです」(益田院長)
容疑者の口から犯行の動機などが語られれば、事件の真相解明が進み、こうした様々な問題を解決するためのヒントが明らかになることもあるだろう。しかし「谷本容疑者の回復は絶望的だ」(前出・社会部記者)。大惨事の“原因”が明らかになることはあるのだろうか。
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