コロナ禍で感染症の脅威にさらされてきたこの2年、ウイルスとの対峙において、そもそも私たち人間はどんな世界を生きているのだろう。新著『コロナ後の世界』が話題の内田樹氏と、病理学の専門家・仲野徹教授が、ウイルスの“生存戦略”からコロナ後の日本社会まで、縦横無尽に語り合った。(全2回の1回目。後編を読む)

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日本人のマスク着用率の高さが貢献しているのかも

内田 最近、日本ではコロナウイルスの感染者が大きく減りましたね。もう終息したような空気になってきていて、Go Toキャンペーンの再開などが言われていますが、イギリスやドイツでは、新しく変異したオミクロン株の感染が広がって1日の感染者数が5万人を超えています。第6波の可能性も含めて、これから感染状況はどうなりますか?

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仲野 こればっかりは誰にもわからない(笑)。ウイルスに変異が起きて自滅したのではないかという説もありますが、たぶん嘘でしょう。ウイルスがそんなに都合よく自滅してくれたら苦労はしません。こんなに一気に減った理由はわからないから、よくわからないうちにまた増える可能性も十分あるのではないかと案じています。

仲野徹教授

 ワクチン接種率が日本と同じくらいの国でも、欧米ではマスクをしてない人がけっこう多いので、日本人のマスク着用率の高さが貢献しているのかもしれません。感染者数が減っているこういう時期にこそ落ち着いた議論をして準備してもらいたいのですが、みんなあっという間に忘れてしまっている気がします。

コロナ関連の研究にものすごくお金が流れている

内田 喉元過ぎれば熱さ忘れて、コロナ前の世界に戻ると思っている人が相当いるように見えます。コロナによって社会に決定的な変化が起きたとは思っていないし、思いたがらない人がたくさんいます。でも、人獣共通感染症は21世紀に入ってもう4回目です。SARS、新型インフルエンザ、MERS、そして新型コロナ。その事実を踏まえたら、今回の新型コロナが収束しても遠からず次の新しいウイルスによってパンデミックになることは高い確率で予測されるわけです。そのための準備はどうなっているんでしょう?

仲野 備えという意味では、近年われわれの間では「出し過ぎとちゃうんか」って噂されるほど、コロナ関連の研究にものすごくお金が流れています。必要ではありますが、ウイルス感染の研究者は相当に潤っているはずです。