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年上世代を上回る、若者の安定志向
さらに男は続ける。
「まぁ、でも、もしも食えなくなったら俺が養ってやるよ」
開いた口が塞がらなかった。
後から聞いた情報によると、その男は都内で複数の飲食店を展開する経営者で、酒を飲んで酔うと必ずターゲットの女性を決めてマウントを取ってくるタイプの人物らしい。
マウンティングの後で「俺が養ってやろうか?」とオマケに口説いてくるのだから、余計にたちが悪い。
会の終了後、誘ってくれた友人からは平謝りされたが、私の気持ちは一向に鎮まらなかった。
それどころか、その夜は怒りで眠れず、まんじりともしないで一夜を明かす。
そして、その翌日から私は、会社員ライターとして人生の再スタートを切った。
ここで、「生活定点」調査の1つのデータを見てみたい。
「仕事をするなら、やりがいよりも安定性で会社を選びたい」と感じる人の割合についてである。
調査の結果、安定を選ぶ人は全体で約3割となった。
それほど高い数値ではない。
しかし、2012年を境に、若者の安定志向が年上世代の安定志向を上回っている。
「お金に関係なく、三度の飯より書くことが好き。世の中はお金が全てじゃない」
そう啖呵を切ったあの日の私はまだ25歳で、「自分がやりがいを感じられること」を真剣に探し出し、ようやく会社員ライターという職をセカンドキャリアに選んだ。
しかし、あの男は「人生やっちゃったね」とほざいた。
もしかすると、近頃の若者に対しても、あの男のように夢を搾取してくる大人が周囲にいるのではないか。
ふと、そんな仮説が脳裏をよぎる。