文春オンライン

「あ~あ、人生やっちゃったね…」一流アイドルから会社員ライターに転身した大木亜希子が初対面の男性からかけられた“衝撃の言葉”

『博報堂生活総研のキラーデータで語るリアル平成史』より #1

2022/01/16
note

年上世代を上回る、若者の安定志向

 さらに男は続ける。

「まぁ、でも、もしも食えなくなったら俺が養ってやるよ」

 開いた口が塞がらなかった。

ADVERTISEMENT

 後から聞いた情報によると、その男は都内で複数の飲食店を展開する経営者で、酒を飲んで酔うと必ずターゲットの女性を決めてマウントを取ってくるタイプの人物らしい。

 マウンティングの後で「俺が養ってやろうか?」とオマケに口説いてくるのだから、余計にたちが悪い。

 会の終了後、誘ってくれた友人からは平謝りされたが、私の気持ちは一向に鎮まらなかった。

 それどころか、その夜は怒りで眠れず、まんじりともしないで一夜を明かす。

 そして、その翌日から私は、会社員ライターとして人生の再スタートを切った。

 ここで、「生活定点」調査の1つのデータを見てみたい。

「仕事をするなら、やりがいよりも安定性で会社を選びたい」と感じる人の割合についてである。

 調査の結果、安定を選ぶ人は全体で約3割となった。

 それほど高い数値ではない。

 しかし、2012年を境に、若者の安定志向が年上世代の安定志向を上回っている。

「お金に関係なく、三度の飯より書くことが好き。世の中はお金が全てじゃない」

 そう啖呵を切ったあの日の私はまだ25歳で、「自分がやりがいを感じられること」を真剣に探し出し、ようやく会社員ライターという職をセカンドキャリアに選んだ。

写真はイメージです ©iStock.com

 しかし、あの男は「人生やっちゃったね」とほざいた。

 もしかすると、近頃の若者に対しても、あの男のように夢を搾取してくる大人が周囲にいるのではないか。

 ふと、そんな仮説が脳裏をよぎる。