そんな中、エキゾチック・ワールドのイベント・プロデューサーのポーラから訃報が届きました。チャーリーが突然の心臓発作で、新しいエキゾチック・ワールドを見る前に他界しました。初めて会ったあの日。エキゾチック・ワールドを丁寧に案内してくれたチャーリー。物静かで力強く、ジェニー・リーを誰よりも愛し、ミュージアムもジェニーのごとく愛していました。東の彼方から来た私を「よく来たね」とまるで父のように大きく優しく抱きしめてくれたチャーリー。前年のエキゾチック・ワールドコンテストで自慢げに「チカ、君の写真のフレームを2つも飾っておいたよ。どうだい?」ってニコニコして話したのが、私と彼の最後の言葉でした。
ポーラから「あなたに宿った新たな生命のことをディクシーに伝えて、彼女を元気づけたいの。だからラスベガスに舞い戻ってほしい」と言われました。
私は新たな生命を体内に抱えてこの年、またエキゾチック・ワールドで踊る決心をしました。同時に「私は踊れるのかしら?」とも思いましたが、エキゾチック・ワールドでの前代未聞の妊婦バーレスク・ショーにワクワクと胸をときめかせたのでした。
バーレスク・ダンサーとステージ上で結婚式
エキゾチック・ワールドで親しいバーレスク・ダンサーたちに囲まれてフランクな結婚式をしたい。「どうせならラスベガスのステージ上で結婚式をしちゃおう」とイベントのプロデューサーのポーラと話し合い決定しました。式を正式に挙げるのには公証人か市長の列席が必要。
「ラスベガス市長か資格を持つ私たちか、どっちがいい?」
「もちろん、あなたたちよ」とポーラとエルヴェスに頼みました。“メキシカン・エルビス”の異名を持つエルヴェスは粋でいなせなゲイのシンガーで、この年のMCでもありました。
やると宣言はしたものの、お腹が大きくてショーを観せられるのだろうか? 果たしてセクシーなのであろうか? 体調は大丈夫だろうか? 体が思うように動かないジレンマや衣装製作に集中できないもどかしさのせいか、そんな心配の波が押し寄せてきて頭が沸騰してどうにかなりそうなとき、エキゾチック・ワールドからディクシーとアリゾナのバーレスクの大御所、サタンズ・エンジェルから電話があり勇気づけられました。私は彼女たちに「ブライドメイドをやってほしい」と申し出たのでした。彼女たちは私に子供ができたことと、ブライドメイドになることを、大変喜んでくれました。
「ヘイ、ダーリン、チカ。何も心配することはないよ。あなたは小さいけれど、ドデカいバーレスク・ダンサーだってことをみんな知っている。何をやろうが問題ないよ。あたしなんか妊娠してなくたって、今や大きなお腹なんだから。がっはっっはー!!」
「すごく嬉しいわ。チカ。あなたがエキゾチック・ワールドで式を挙げてくれるなんて。本当にありがとう」
何かが起こると、いつもバーレスクに関わる“何か”から助けられます。ダンサー仲間だったり、バンドさんだったり、応援してくれる方々だったり、スポットライトだったり。こちらこそ、本当にありがとう。激動の時代のエキゾチック・ワールドと私に何か幸せが起きることを望んで。良くも悪くも時代はお構いなしに変わってゆくのです。