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「憧れのヒロインを“母”にしていいのか」という声も…『ふたりエッチ』で妊娠・出産を描くまでに“19年を要した理由”

克・亜樹さんインタビュー #2

2021/12/30
note

――読者の反応はいかがでしたか?

克・亜樹 読者からは男女問わず、優良さんと真の出産シーンを読めてよかったという感想をもらえました。しっかり描いてよかったなぁって。「自分たちも、こんな体験をしてみたいな」と思ってくれるなら、『ふたりエッチ』を描いてきた意味もあったかなと。あとは、編集部の意向で描くタイミングが遅れたおかげで、しっかり知識を蓄えたうえで不妊治療というテーマに取り組めたので、結果的にはよかったかもしれません。

なかなか納得してくれない読者

――「なんで、このキャラをもっと出さないんだ」「なんで、このキャラの恋を叶えてやらないんだ」といった声は寄せられますか? 長寿漫画ゆえに、特定のキャラクターに感情移入している読者も少なくないのではないかと。

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克・亜樹 たくさんいるキャラクターのなかでも、真に思いを寄せている菊池みゆきちゃんは本当に人気があるし、僕も好きですから、フィーチャーした話はいっぱい描いています。みゆきちゃんは高校生の頃から真を思い続けていますが、彼には優良さんという妻がいるので、その恋が成就することはありません。その思いに折り合いをつけて、一人で生きていく人生を選択した姿をきちんと描いているんですけど、読者の一部からは「早く、みゆきちゃんを幸せにしてください!」と頼まれるんですよ。

©克・亜樹/白泉社

 僕としては「この子の幸せは、この子のもの」という考えですし、みゆきちゃんを登場させるたびにそれを強調しているんだけど、読者は納得してくれない(笑)。しょうがないから、いろんなキャラクターに「あんたはそれで幸せなの?」と問わせて、「自分はお一人様を楽しんでいるのに、なんでそんなふうに言われなきゃいけないの?」と答えさせていたら、どんどんみゆきちゃん登場のエピソードが増えちゃって。

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