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胸がキュンとする少女漫画が好きだった

――そうしているうちに克先生自身も感情移入してしまうのではないですか? 菊池みゆきに加えて、真と同じ会社に勤めながら、風俗でも働いている花森泉というキャラクターにもそれを感じるのですが。

克・亜樹 どのキャラクターにも共感と感情移入をしながら描いてはいますけどね。それでも、会社員でありながら風俗でも働いている泉ちゃんを、僕がどこまで理解しているのかは自分でも疑問です。実は当初、彼女の人生には、ある種の“着地点”を用意していました。ところが物語が進むにつれて、泉ちゃんというキャラクターが僕の手を離れて歩き始めたんです。こうなると、頭の中で「彼女はこういうこと、やるかな?」「いや、やらないな」と常にせめぎ合いながら描くことになります。その時、「この子の人生に、僕が考えていた着地点を勝手に置くことはできないな」と反省しましたね。

©克・亜樹/白泉社

――みゆきのエピソードは、もはや恋愛漫画と化しているといってもいいのではないでしょうか?

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克・亜樹 恋愛漫画が好きなんですよ。特に美内すずえ先生の作品は、どれも大好きで。僕が子供の頃、母親が『別マ(別冊マーガレット)』『別フレ(別冊フレンド)』『別コミ(別冊少女コミック)』『花とゆめ』など少女誌をいっぱい買っていたので、少年誌を読んだことがなかったんですよ。男だから少年誌を読まなきゃという思い込みから、友達から『少年ジャンプ』を回してもらって『包丁人味平』や『アストロ球団』を読んだけどハマらなかった。続きは気になるけど、心がキューッと締めつけられないとダメなんですよね。真柴ひろみ先生の『瞳いっぱいの涙』を電車の中で読んで、あんまり涙がポロポロ出てくるものだから降りなくていい駅で降りたことがありました。

30巻が出た頃に「もう限界!」

――恋愛漫画が克先生のルーツだけに、『ふたりエッチ』の最大のテーマは“愛”であると思うのですが。

克・亜樹 それなしでは、世の中は回らないですからね。「じゃあ、愛ってなに?」と、作者として自問自答し続けています。その時々の僕の愛についての解釈、世の人々のさまざまな愛の解釈を、キャラクターたちを通して伝えているのが、『ふたりエッチ』という作品じゃないかなと。