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――なるほど。認知症の症状は自分たちの生活の延長線上にあると感じますね。

 そうなんですよ。発達障害傾向が強い人はもちろんですが、認知の歪みは多かれ少なかれ健常者にもあります。睡眠障害や過労、アルコールの摂取などでも同様なことが起こりえます。

デザインの視点で分析した「44の認知機能障害」

――こういった分析は、認知症専門医もインタビューに同席して行っているのですか。

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 いいえ。専門医にご意見いただいたりはしていますが、基本的にうちのチームで「デザイン」の視点から分析しました。デザイナーは、人に対して、必要な情報を認知してもらい、必要な行動を促す仕事なので、認知機能に対するアプロ―チは、デザインのアプローチそのものなんですよ。「顔がわからない、認知できないとはどういうことか」などと、本人の困りごと一つひとつを認知科学的な視点で分析・解釈をしていきました。この結果、44の認知機能の障害という形にまとまりました。

――「わからない」の解像度が非常に高いですね。

 その解像度を高めるためにインタビューを重ねた感じです。僕は医師ではないので、「前提」がない分、シンプルにゼロから聞くことができたところはあると思います。

「異世界RPG風」への反響は…?

――こうしたインタビューを「異世界RPG風」にまとめたのはなぜですか。

 「認知症の方が生きている世界をちゃんと伝えたい」というところからスタートし、、当初はご本人の語りを中心としたケーススタディ的な見せ方を考えていました。しかし、それでは読んでくれる人はいままさに身内に認知症の方がいるだとか、医療従事者の方とか、読者が限られてしまうなと思いまして。

 メンバーと何度も話し合いを重ねて形にしていく中で、「『地球の歩き方』みたい感じが良いかも」という考えに至りました。今まで見たことのない景色や、新しい民族、不思議な風景が認知症の方には見えているわけだから、全く行ったことがない未知の世界を旅することに近いかもね、と。

――悲愴感なく読める半面、「異世界」とすることに対して、認知症の方やご家族がショックを受けたり、医師が怒ったりすることはありませんでしたか。

 僕も最初は認知症のある方に怒られたり、医療や介護の現場をわかっていないと批判されたりしないかと不安に思っていたんです。でも、びっくりするくらいそういった反応はありませんでした。喜んでくれるお医者さんもいますし、介護の現場の方など、認知症のことをよく知っていて、よく考えている人であればあるほど、受け入れてくれているんですよ。