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「M-1を信頼しているんです」決勝進出した唯一のアマチュア『変ホ長調』がそれでも“プロ芸人”にならなかったワケ 《M-1は青春》

変ホ長調インタビュー #2

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「なんで同じネタしたん」って言われて…

彼方 おっそ(笑)。でも、あのときは出させてもらって、聞きに行って、すごい良かったです。ただ予選に関しては悔いも残っていて、ネット配信されていることの意味がよくわかってなかったんですよね。この年も例年通り1本のネタを足したり引いたりしながら披露してたんですけど、3回戦でやったネタは動画で配信されてたんです。もちろんそのことは知ってたけど、準々決勝のお客さんがそれを全部見てから来てるっていうことを理解してなかった。

小田 3回戦からネタを変えたところはウケたんやけど、そこしかウケなかったね。後から「なんで同じネタしたん」って言われて、あかんかったんやと気づいた。ずっと同じネタを磨いて磨いてっていうスタイルでやってたんでそれが当たり前になってたけど、お客さんは違うネタが見たかったんやとようやく気づきました。それで、ラストイヤーの2020年はネタを3本作って臨みました。

©文藝春秋 撮影=鈴木七絵

――ただ、その昨年は初戦の2回戦で敗退という結果に終わりました。

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彼方 やっぱりコロナの影響は大きかったですね。本当は外部のライブに出てネタを試すのはもちろん、ラストイヤーやからもっと色んなことに挑戦したかったんです。でも、東京と大阪の行き来もあんまりできなくて。他の芸人さんも同じだとは思うんですけど、あっという間に終わっちゃった。

小田 コロナに罹って出場できなくなるのが一番嫌やったんです。私達もそんな若くないし、重症化しちゃって出れなくなったらと思って、安全策をとってしまった。

コロナ禍のM-1 お友達に「声がちっちゃかった」って 

彼方 予選の規模をなるべく縮小したいということで、シードの条件も変わりました。前年に準決勝へ進出したコンビだけがもらえていた1回戦のシード権が、過去に一度でも準決勝に出たことがあるチーム全てに与えられることになって、私達も初戦が2回戦になったんです。

小田 ネタを試す場がどんどん減ってしまいました。しかも3回戦もなくなって、2回戦の次がいきなり準々決勝になったので、2回戦の審査もかなり厳しくなって……。後ろで見てくれてたお友達に「声がちっちゃかった」って言われたのもショックでしたね。お客さんが笑うと聞こえへんくなるから笑うのをやめちゃって、ウケが弱くなってたよって。

彼方 コロナ対策で、マイクから離れたところにバミリがあったんです。いつもより離れてると声の感じがどうなるのかとかもわかってなかった。そこがわかってないのがそもそもダメなんですけど。

©文藝春秋 撮影=鈴木七絵

小田 舞台から見るとウケてたから、悔いが残りまくったんですよね。でも、めちゃめちゃ面白かったら次に行かせてくれるというところはM-1を信頼してるんです。だからめちゃめちゃ面白くはなかったんやなと。2回戦の動画も、変ホ長調とからし蓮根さんと見取り図さんの3組で1本になって上がってたもんですから、めっちゃ見てもらえた。最後の最後まで良くしていただいたなという感じです。