1ページ目から読む
2/4ページ目

 たとえば2012年の青少年研究会による調査では、男性は76.4%が、女性は66.2%が男性ヴォーカルのアーティストのほうを好むと回答している(全体では70.8%)。嵐やEXILEは女性ファンが圧倒的に多いが、B'zやサザンオールスターズでは男性ファンのほうが多いという具体的な結果も確認できる(南田・木島・永井・小川編『音楽化社会の現在』2019年)。

 70年代から現在までの音楽チャートにおけるアーティストのジェンダーギャップは、おそらくこうした音楽志向の反映だ。つまり、男女ともに女性ヴォーカルよりも男性ヴォーカルを好むからだ。

 もちろんこうしたジェンダーギャップを、音楽ファンの志向だけに帰因させることもできない。そもそも送り手である音楽プロダクションが男性アーティストに偏った展開をすれば、女性アーティストのヒットも減り、そしてファンの志向性も左右される可能性があるからだ。これはニワトリと卵の話ではあるが。

ADVERTISEMENT

嵐 ©文藝春秋

 また、女性アーティストの場合は歴史的にアイドルが大ヒットする傾向が強いことはすでに見てきた。しかしその場合、中長期にわたって人気が継続することはさほどない。ピンク・レディーや松田聖子、おニャン子クラブなどのピークは思ったほど長くない。逆に男性アーティストは、B'zやMr. Children、嵐、SMAPなどが10年以上にわたってチャート上位を維持してきた(男性アーティストの人気が長すぎる、という見方もできる)。

 この点からは、女性アーティスト(とくにアイドル)には、若さや疑似恋愛的な魅力が強く求められてきたことをうかがわせる。

民放音楽特番の男女比を調べてみると……

 ここで話を『紅白』に戻そう。

 周知のとおり、『紅白』は男女同数を原則とする。しかし、それはこれまでの音楽ヒットの傾向とはやや異なる。見てきたとおり、ヒットの6割前後は男性アーティストだからだ。つまり、ジェンダーの側面で言えば『紅白』はヒット傾向を確実に反映してきたとは言えない。

10年代を代表するアイドル、AKB48 ©文藝春秋

 もし男女同数の形式を廃止して人気を反映して出演者を決めるならば、視聴者ニーズに応えるために男性アーティストのほうが多くなる可能性が高い。実際それは、11~12月にかけて放送された民放の音楽特番に顕著に現象している。

 たとえば、12月24日に放送された6時間特番『MUSIC STATION ウルトラ SUPER LIVE 2021』(テレビ朝日)では、披露された全82曲中52曲(63%)が男性アーティストによるものだった。その一方で、女性アーティストはその半分の26曲(32%)にとどまっている。