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  海外に目を移せば、近年エンタテインメントやメディアではジェンダー平等を目指したさまざまな施策が見られる。

 たとえばドイツ・ベルリン国際映画祭は、今年2021年から最優秀主演俳優賞と同助演俳優賞でジェンダー区分をなくし、ともに女性が受賞した(もちろん今後は男性が両賞受賞する可能性もある)。

 アメリカでは、制作現場においてジェンダーや人種による不平等を是正するための「インクルージョン・ライダー(包摂条項)」を目指す取り組みが推進されている。これは2018年のアカデミー賞において主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドのスピーチによって一気に広がり、来年はグラミー賞で採用される予定だ。

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 動画配信サービス最大手のNetflixでも、今年1月に配信作出演者のジェンダーを調査した報告書「インクルージョン・レポート」を発表し、ジェンダーや人種の平等をより推進する姿勢を見せている。

 そしてイギリスの公共放送・BBCでは、番組出演者を男女同数にする「50:50プロジェクト」を2017年から始めている。NHKが今回の『紅白歌合戦』から司会の男女区分を撤廃したのは、この影響かもしれない(日本では今年から『ハフポスト』が参画している)。

『紅白』はこれからどう変わるか?

 これらを踏まえると、無意識的にアファーマティブ・アクションと同等の機能を果たしてきた『紅白』がジェンダー平等を意識した今後、どのような変化を見せるかは大きな注目に値する。とくにグラデーションのロゴを採用した今年は、なんらかの姿勢を明示する可能性が高い。

 近年は問題視されながらも、70年以上続いてきた制度には思いがけない効用もあった。視聴者であるわれわれは、「機会の平等」と「結果の平等」の違いや、従来の非対称性が再生産され続ける可能性などを意識しながら、今後も日本を代表する音楽番組がどうあればいいか大いに議論する必要があるだろう。