1ページ目から読む
3/4ページ目

 2週連続で放送されたフジテレビの『2021 FNS歌謡祭』では、第1夜では女性アーティストが上回ったが、翌週の第2夜を含めるとこちらも男性53%に対し、女性37%と差がつく。

 民放4局の合計では、男性57%に対し女性35%と20%以上の差がついた(男女混成は7%)。

 

意図しない形での“アファーマティブ・アクション”

 このような民放の音楽特番に対して、『紅白』の男女同数制はとても平等だと言える。逆に、ジェンダー平等を目指すために『紅白』における男女区分の撤廃を求めることは、ジェンダー不平等を招くリスクが生じる可能性もある。

ADVERTISEMENT

 結果的にではあるが、『紅白』の男女同数の制度は、音楽ヒットにおけるジェンダーギャップを埋めるためのアファーマティブ・アクション──差別や不平等を解消させる策として機能してきた。

 もちろんそれは意図的ではない。男女別の形式は、終戦直後の1945年の大みそかにラジオ放送された前身番組『紅白音楽試合』に源流がある。当時、ディレクターの近藤積が娯楽の3S=「スポーツ、セックス、スリル」の要素を盛り込むことを意識し、その結果として対決とそれにともなう男女同数になったという(『紅白50回 :NHKウィークリー ステラ臨時増刊』2000年)。

 つまり男女同数にすることは意図的ではあったが、それは対決や女性の性的魅力を期待してのことだった。

ジェンダー平等に向けた動き

 現在、紅組と白組の勝敗の結果は、年が明けた翌日には多くのひとが忘れてしまうほど大した関心を持たれていない。もはやそれは形骸化した制度でしかない。よって、将来的に紅白の区分が廃止される可能性もあるだろう。

 ただその際に注目されるのは、これまでの男女同数制をNHKがどうするかだろう。