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「コロナ禍なので家庭訪問は控えさせていただきます」 無情なメモに見たコロナ時代の“孤独死のリアル”

コロナ禍の孤独死 #1

2022/01/08
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無縁社会により増えている「緊急搬送」のケース

 しかし、私はそんな現実を日々目の当たりにして、果たして弱者が取り残されるような社会でいいのかという思いを常に抱いている。コロナ禍は、そのような残酷な現実に拍車を掛けた。人の死が長期間認識されない事実が告げている、無関心な社会に対して大きな危機感を感じずにはいられない。

 高齢者や孤立した親子のサポートを行っている一般社団法人LMNの遠藤英樹氏は、そんな無縁社会と長年向き合ってきた。様々な案件を取り扱う中で、最近の変化を肌身で感じているという。

「周囲からも孤立していて精神的にも孤独感を抱えた人たちもすごく多いと感じます。だから我々もコロナ禍で、コミュニケーション重視のサポートにシフトしているんですよ。

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 最近、緊急搬送の案件が増えているんです。高齢者や中年の方が、外出が億劫になり、腰や膝が痛いという理由で、病院にいくことがなくなってきている。そして、それを相談できる相手もいない。だから気がつくと一気に体が悪くなって、命に係わる状態で病院に緊急搬送されるんです」

©️iStock.com

たった一本の糸という繋がりさえも希少

 それでも、例えば遠藤さんの介入で、ギリギリ一歩手前で命が助かった例もある。

 公団住宅に住むある70代の女性は夫亡き後、親戚付き合いもなく、近隣住民との付き合いも希薄で、社会から孤立していた。そんな中、遠藤さんだけが唯一の社会との接点だった。

 女性はある日、部屋でつまずき転倒してしまった。女性と連絡が取れないことを心配した遠藤さんは、すぐに警察に事情を説明し、警察と共に鍵を壊して女性宅に踏み込んだという。

「僕たちが行ったら女性は横向きにリビングで倒れていたんです。意識はギリギリあったけど、声は出せない状態でした。恐らく3日間ぐらいはそのままの状態で倒れていたのでしょう。苦しかったと思います。女性は他者との接点がないため、あと1日2日僕たちが訪ねるのが遅れていたら、残念ながら亡くなっていたかもしれません」

 すんでのところで女性の命は助かった。しかし、その後、女性は長期間放置された影響で、泌尿器に重篤な感染症を患い、現在も入院生活を余儀なくされている。たった一本の糸があったことから、女性は何とか命を取り留めた。しかし、その一本の糸という繋がりさえも希少なものになっているのが我々の社会の現状なのである。

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