年間孤独死3万人。孤立状態1000万人。日本はすさまじい勢いで孤立大国へと向かっている。それが、日本の孤独・孤立問題をテーマに長年取材と執筆を行なっている私の偽らざる本音だ。特に新型コロナウイルスの流行が始まってからは、これまで以上に人と人との繋がりが分断されてきている。そんな日本社会が抱えるリアルな「死」の現場を追った。(全2回の2回め/前編を読む)
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離婚後に男性が身を持ち崩し孤独死へ…
「日本は大変なことになっていますよ。突然、警察から電話がかかってきて、〇〇さんですか。ご身内の方が死んでいます、というのがデフォルトになっている。親族や友人など身内が見つけるということは少なくなっていると感じます」
事故物件を多数扱っている不動産業の50代男性のA氏は、そう言って驚きを隠さなかった。
ある50代の男性はコロナ禍で孤独死して、10か月以上に渡って放置されていた。
妻と離婚後、男性は3LDKのマンションで一人暮らしをしていたという。
「ご遺族は80代のお父さんだったのですが、『息子さんが亡くなっています』と突然警察から電話があったみたいです。あまりに長期間放置されすぎてご遺体はミイラ化していたそうです。50代といえば、働き盛りで僕と同世代。これだけの期間放置されるなんて、本当に切ない話ですよ。息子さんは離婚後、社会から孤立し、お父さんともずっと疎遠だったそうです。コロナ禍で仕事もうまくいかなかったようで、なおさら孤独感を募らせたのではないでしょうか。僕が扱う物件の中でも、離婚後に男性が身を持ち崩して孤独死する例はかなり多いんですよ」
『早く何とかしろよ!コノヤロー!』罵声を浴びせてきた近隣住人
A氏は数々の孤独死物件を見てきた。無縁社会の深刻化をひしひしと感じている。最近扱ったのは70代女性が孤独死して、死後3週間が経過した物件だという。
「その物件のフロアのエレベータードアが開いた瞬間、異様な臭いがフロア全体に立ち込めているのがわかったんです。それと同時に近隣住民たちが出てきて、『早く何とかしろよ! コノヤロー!』と私に罵声を浴びせてきました。私は親族に頼まれて、物件の査定にやってきただけなんですよ。だけど住民たちの怒りは凄まじかったですね。怒りをぶつける矛先がないんでしょう。だけど、その怒りももっともだと感じましたね」
聞くと近隣住民は、あまりの悪臭のため窓も開けられない日々を過ごし、かつ隣人宅には室内にまで臭いが入り込んでいたらしい。こういった孤独死を巡る近隣住民のトラブルは珍しい話ではない。いたるところで起こっており、地域を揺るがす問題になっている。しかし、冷静に考えてみると、それは我々の社会が、未曽有の無縁社会に突入しているということの現れでもあるのではないだろうか。