――その時にちょっと救われたというか。
依存症子 救われましたね。帰りの護送車で警察の人にいろいろ話を聞いて、「シャブ中は依存症なんだよ。大体戻ってきちゃうから、君はそうなっちゃ駄目なんだよ」みたいなお話とかもしてもらって。逮捕された後、本当に人に恵まれたと思います。
出所後に直面した“誘惑”「またここに戻ってきちゃう」
――2年以上の実刑後に社会復帰されましたが、「薬がほしい」みたいな気持ちになったことというのはあったんですか?
依存症子 もちろん、毎日思っていました。立川拘置所には、依存症とかパーソナリティ障害についての本があって、読めば読むほど全部自分に当てはまるので、「これ、断薬しないと、またここに戻ってきちゃうな」と思ったんです。立川拘置所はすべて独居で、雑居がなかったので、他の受刑者とは運動の時にちょっとお話しする程度だったんですけど、2回以上刑務所に来ている累犯の人がすごく多かったんです。なかでも圧倒的に覚醒剤や窃盗が多くて、私みたいに生育環境も決してよくないし、依存症だと分かっているけど治療に行ってなくて、またここに戻ってきている。これじゃあ私は絶対累犯になると思って、徹底的に依存症の勉強を始めた時に、冒頭にお話しした進藤さんの講話が流れたんです。
――何年前に出所されたんですか?
依存症子 5年前。ちょうど出所から5年経ちました。
――今まであっという間ですか?
依存症子 出所直後は一番長かったかなという気がします。仮釈放をもらって1年2年ぐらいがすごく長く感じました。
――それはなぜですか?
依存症子 みなさん出所をゴールだと思いがちなんですけど、出所からがスタートなんですよね。やり直しの。今まで夜の仕事しかしてなくて、一般教養もない私が、急に社会に放り出されて、何もできない。無力。タバコも、せっかく刑務所でやめられていたのに、ストレスから吸い始めちゃったり、スマホのゲームに依存し始めたりということが、出所後2年ぐらいは起きたんです。
今ではスマホゲームは一切やらなくなりましたし、タバコもチャンピックスという禁煙補助薬を使ってやめて、今は一切吸いません。でも、そこで軌道修正することの大変さが分かったんですよね。刑務所の中では強制的に依存できない状態になりますが、社会に出た後、コンビニに入れば酒もタバコも売っている。ちょっとSNSやTwitterを見れば、大麻も覚せい剤も売っている。自制する気持ちを強く持つまでにかかった時間が、やっぱり2年ぐらいあったかなという気がします。