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今のホームレスはただ家がないというだけ

 上野公園で暮らして18年というホームレスの「コヒ」が公園内のベンチに座り、スーパーで買ったキムチをツマミに焼酎を飲みながら話す。

 私はホームレス生活中、年金を受給しているホームレスに多く会ったが、彼らの受給額は全員が7万円であった。その理由をコヒは非常に分かりやすく説明してくれた。

 保険料の納付月数が短く受給額が少ない場合、たとえば3万円/月で貯蓄がない人であれば、多くは生活保護を受けるはずだ。しかし、厚生年金にも加入しており、たとえば14万/月を受給できる人であれば、生活保護を受けることはできないし、そもそも部屋を借りることができる。

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 では、7万円/月の人が生活保護を受けるとどうなるか。月12~13万円もらううち、少なくとも家賃・光熱費で6~7万円の金が消え、自由に使える金が7万円を切るという現象が起きてくる。

「だったら路上でもいいから7万円自由に使えたほうが俺はいい」

 そう考える人がホームレスになっているのだ。実際にホームレス生活をしていると分かるが、路上で暮らしながら月7万円の収入があれば相当リッチな生活ができる。だって、私は3500円/月でもなんとかなっているのだから。

 現にコヒはその7万円で雨が降ればサウナに泊まり、私のように雨の日に泣きじゃくるといった思いもせずに済んでいる。

「今のホームレスはただ家がないというだけなんだけど、昔の考え方で止まっている人が多いんだよね。このおじさんなんて成城石井で買い物してるんだから」

 コヒはそう言いながらとなりに座るバンダナを頭に巻いたホームレスに話を振った。バンダナのホームレスが自慢気に話し始める。

「俺は毎日モーニングコーヒーを飲んで、昼から酒を飲んで、優雅な暮らしをしてんだぞ。公園の客は気を遣って声を掛けてくるけどな。俺の通帳見てみるか? 君のお父さんよりも金持っている自信はあるぞ。いくらだと思う?」

 金を持っているとはいえ仮にもホームレスである。20万くらいだろうか。

「バカ、20万ならこの封筒に入ってるぞ」

 バンダナのホームレスはポケットから封筒を出し、現ナマ20万を見せてきた。

「そんなの周りに見られたら夜狙われますよ」

 私が注意するとコヒも「兄ちゃんの言う通りだよ」と封筒をしまわせた。コヒは最後にこう言った。