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「脱出島」という企画自体に無理があった

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の元委員でメディア法を専門とする立教大学名誉教授・服部孝章氏は、今回の疑惑に対してこう語る。

「今回の件で一番問題なのは、ドキュメンタリーという体裁の番組で、ドラマのような撮影方法をして視聴者をだましたことです。視聴者が『なにか演出があるな』とうすうす分かっていたとしても、TBSはそれに胡坐をかいてはいけませんでした。テレビに対する不信感が増してしまいます。

ハリセンボンのショベル竹とイカダも主にスタッフの手で作られていた ©文藝春秋 撮影:細田忠

 そもそも、この『脱出島』という企画自体に無理があったのだと思います。限られたアイテムだけで無人島から脱出するというのは、誰がやっても相当な危険が伴います。素人が作ったイカダなんて海に出たら壊れるのは目に見えていますし、南の島だからといって11月の海は非常に寒く命の危険があります。だからこそ、イカダを作るのはプロがやったり牽引したりしたのでしょうが、その結果、危険性そのものが伝わらなくなってしまいます。本来であれば『専門家の指導のもと安全に配慮してやっていますので、マネしないでください』という注意書きをするべきでした。子どもに与える悪影響は全くないとは言い切れないし、出演者もそういった問題からは無縁ではいられないでしょう」

番組に感激していた子どもたちを裏切る行為

 子どもの視聴者が多い「冒険少年」において、子どもたちを「全国少年少女諸君」と呼び、冒険の楽しさを訴えてきたあばれる君は、やらせ行為に加担したとして、一部ネットでは非難の声があがっている。

 だが、あばれる君はあくまで出演者のひとりだ。牽引をはじめとした過剰演出や、島での飲食物提供などの行為は他のタレントにもおこなわれており、TBSに確認すると「体調や安全管理のため、出演者に必要最低限の食料や飲料を提供する場合もあります」と認めた。

「全国少年少女諸君」と熱く語るあばれる君

「冒険少年」は、あくまでもバラエティ番組だ。そこに多少の演出があること自体は何ら非難されるべきものではない。

 だが、そもそもの企画の根幹にかかわる部分や、明らかな嘘を交えた見せ方をすることは、あばれる君の頑張りや、ハリセンボンの2人の創意工夫に感激しながら番組を観た子どもたちを“裏切った”ことにならないだろうか?

 また、文春オンラインに送られてきた「番組スタッフ」を名乗る人物からのメッセージには以下のような窮状が綴られていた。

《長時間にわたる過酷な撮影、やらせ演出の噂で、スタッフが中々増員されないこともあり、労働環境も杜撰なものになっています。ロケ5日間ほぼ寝れない、ということもあります。(中略)誰も疑問を抱かなくなってしまっているこの状況、さらにスタッフの勤務環境による過労死などの危険性、テレビ番組制作の在り方に、大きなわだかまりを感じ、ここに報告させていただきます》

スタッフが船に搬入した竹や資材はかなりの量だった ©文藝春秋 撮影:細田忠

 そもそも企画自体に無理がある番組を成立させるために、スタッフが過度な労働を強いられているのであれば、これほど理不尽なことはないだろう。取材班が実際に撮影現場の様子を見た時も、少人数で多量の竹を船に運び込んだり、連日深夜まで続くロケを強いられるなど、スタッフにかかる負担は相当なものだった。

 TBSはこのスタッフを名乗る人物の「悲痛な叫び」にどう応えるのだろうか?

その他の写真はこちらよりご覧ください。

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