昨年11月に配信された約7時間半に及ぶドキュメンタリー『ザ・ビートルズ:Ge Back』(ディズニープラスで独占配信中)は、50年以上の時を経て新鮮な驚きと感動を与えてくれる。世界で最も愛された伝説のバンド、ザ・ビートルズが1969年1月、1ヶ月にわたって行った「ゲット・バック・セッション」。「原点に返ろう(Get Back)」というコンセプトの下、デビュー当時と同じ“一発録り”でレコーディングし、ニューアルバムを完成させ、最後に新曲のみのライブを行う試みだった。その一部始終も撮影され、翌70年には記録映画『レット・イット・ビー』が公開された。だが、そこに映っていたのはポールにダメ出しされてキレるジョージ、オノ・ヨーコと妖しく踊るジョンなど“解散前夜”を匂わせる不穏なムードばかり。最後は唐突にビル屋上でヤケクソのようにゲリラライブが始まる。それが彼らの最後のパフォーマンスとなった。これが多くのファンが知る悪名高き「ゲット・バック・セッション」の顛末だ。
しかし、本作でそうした印象は大きく覆される。実は当時、撮影された映像は延べ60時間以上、音声は150時間以上も存在したのだ。中には隠しマイクでジョンとポールの2人だけの会話を録音したものまであった。それらを今回、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作の監督ピーター・ジャクソンが再構成したのが本作である。彼は徹底的に時系列で見せることで、あの1969年1月にザ・ビートルズに起きた出来事を観客に“疑似体験”させようと試みる。そして、数々の名曲が誕生する“奇跡”の場に私たちを同席させる。
あの屋上ライブ後、バンドには確かに一体感と達成感が満ちていた。その翌日、ついにあの曲も完成を迎える。何度も繰り返される執念の一発録りセッション。そこから不朽の名曲「レット・イット・ビー」が生み落とされるのだ。
INFORMATION
『ザ・ビートルズ:Ge Back』
https://disneyplus.disney.co.jp/program/thebeatles.html