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コロナに阻まれた風俗復帰

 しかし、成長していく娘と向き合う日々のなかで、将来に経済的な不安を感じ、侑子は2020年初頭、約6年ぶりに風俗にも復帰した。

「これから小学校に上がれば、塾に行ったりお金がかかるじゃないですか。将来の学費なんかが心配で。そのためにお金を貯めておこうと思って、週に1日ぐらいだけ風俗をやりはじめたんですよ」

 前向きな気持ちで風俗と関わろうとしたそんな矢先、コロナの流行で3月には仕事にならなくなり、店を辞めざるを得なくなった。風俗での稼ぎを貯金する計画がいきなり頓挫してしまったわけだが、侑子の表情に暗い翳は少しも見当たらなかった。  

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「介護の仕事は給料10万円です。普通の人からしたらとんでもなく少ない額だと思います。母子家庭の手当てが別に7万円入りますけど、それでも20万円になりません。だけど、中学のころに一度どん底を見ているんで、貧乏には慣れてるんですよ。もちろん娘の父親からの援助もないです。とにかく、あんまり考えすぎないようにしています。自分が健康でいないと娘の面倒を見られなくなってしまいますから。なんとかなると思って、やっています」

 いつかコロナが収まれば、また風俗に復帰するつもりだという。70歳になった母親は年金をもらっているが、以前と変わらず右から左へと使ってしまい、まったく当てにはならない。愛娘の歩む人生は、ひとり彼女の背中に重くのしかかっている。夜店の金魚を食べようとした極貧の日々を乗り越えてきた侑子は、娘にはそんな思いをさせたくないと言った。

 いざとなれば、いつでも女を武器に生き抜いてやる。そんな芯の強さが彼女をいまも若く、快活に見せているのかもしれない。

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コロナと風俗嬢

八木澤 高明

草思社

2021年12月27日 発売