――お二人がテレビに出始めた頃に比べたら、テレビも絶対的な強者ではなくなった。そうやって少しずつ状況は変わっているんですね。
幸 今ならYouTubeやラジオで、テレビの悪さを喋られてしまうんですよね。テレビも見張られてるという。もういよいよちゃんとアップデートしな、ダメだと思います。逆にもう断わられっぱなしになるかもしれない。テレビには出られへんって。タレント自身がテレビに出なくても生きていける時代に突入してるので。
黒のスーツにピンヒールは「男装」ではない…衣装の理由
――Dr.ハインリッヒさんは衣装も特徴的で、黒のスーツにピンヒール。アーティストスポークンで「私たちは男装したいわけじゃない」とお話しされていましたが、あの言葉の真意はなんでしょうか。
幸 なんていうかな、これジェンダー的な話ではなく、「両性的な美」として見られたいんですよ。男的な格好の良さもあるし、女性的なそのしなやかな感じ、美しさもあっていいし。それを2つ持ってる人間は魅力的で面白いんですよ。女性性も男性性もどっちもある人間の面白さを体現していたい。
面白いことも言いたいですけど、かっこうもつけてたいんですよ。見栄えよくありたい。アルフィーの高見沢さんとかYOSHIKIさんとか宝塚の男役の女優さんとか。人って美しすぎたら面白い。それがかっこいいんですよ。美しいことは面白いんです。
――「美しい」は面白い。
幸 きれいな見かけの女の人、かっこいい女の人が、面白いことを言えるとは思わへん概念を持って育った人が未だにいるから「いや、そんなことないですよ」って抵抗していきたい気持ちはあります。
――お話を伺っていると、Dr.ハインリッヒさんがこの世界で生きていくために、自己防衛としてフェミニズムが必要だったんじゃないかと、そんなことを感じました。何か大事なものを守るため、それはネタだったり、自分たち自身だったり。
幸 そうですね、今もそう。守りたいものは、魂ですよね。自分の魂、それは自分そのものやし。その魂と呼んだものをもうちょっと具現化すると、ランドセルを背負った小さい女の子なんですよ。
――小さい女の子。
幸 その子がつまんなそうにしているんです。その子を笑かさなきゃ、なんです。で、そのつまらんそうにしている女の子って、要するに自分で。そういう女の子は地球に半分おるわけです。
彩 そうですね、ほんまそう。自分なんですよ。最終的に誰を一番笑わしてやるって、自分ですよね。生まれてきたからには笑顔でいたいからこれやってるのかなっていうの、ありますね。
写真=佐藤亘/文藝春秋
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