文春オンライン

特集女芸人の今

「M-1で優勝すれば、すべてがひっくり返ると思っていたのに」ラストイヤーで決勝を逃し…漫才コンビDr.ハインリッヒが語る「その後に待っていたもの」

「M-1で優勝すれば、すべてがひっくり返ると思っていたのに」ラストイヤーで決勝を逃し…漫才コンビDr.ハインリッヒが語る「その後に待っていたもの」

2022/01/29
note

 で、結局その先にあるものが、テレビタレント活動じゃないですか。今ある“女芸人用の仕事”がOKな子らはそれでもいいんだろうけど。私どもはほんとに、もし『THE W』に出て優勝したところで、その先にあるメディアの仕事に興味がないから。ほんとに出る意味がないんですよ。

 やっぱり女性だけというのがほんまに嫌ですね。女を負かせて嬉しくない。

 女を負かせて嬉しくないね。

ADVERTISEMENT

 

『M-1』は女性にとってフェアか?

――お話をうかがってると、『THE W』は、「おもしろい/おもしろくない」以外の要素があまりにもかかわってくる場だと考えられていると思うのですが、それに対して『M-1』は、女性芸人にとっても比較的フェアな場であると思いますか?

 そうですね。M1の審査が女性芸人に不利というのはそんなにないと思いますが、客観的に見て「なんでこれで準決勝行けたの?」ていうウケのコンビがいて、よく聞いたら、予選の審査員がごりごりに気にいって推していたとか。

 そういう嫌な部分もあるけれど、『M-1』の場合は、やっぱり松本さんや上沼さん、あのほんまもんの人らに「おもろい」と言われたいっていう、それだけですよね。お金というより。これ、ほとんど全員そうやと思います。決勝の審査員の視界に入って、そこで「おもろい」と言われたいんですよね。漫才やってて『M-1』出えへんのはやっぱ違うやろうって、そう思いますね。

――なるほど。

 あの戦いの中で芸人たちが紡いできた物語が、すごいものにしたんですよ、『M-1』を。スタッフの方を含め番組を作ってる全員から覚悟を感じるし、そうではない賞レースにはあまり出たいと思わない。

 

――『M-1』があまりにも大きな存在になると、『M-1』後の生き方、芸歴制限で出られなくなってからの生き方が難しくなるんじゃないかと思うのですが、でもおふたりはそうはならなかった。

 ラストイヤー、まあ言うたら命をかけて臨んで、決勝にこそ行かれへんかったけれども、返ってきたものも大きいんですよ。ボーンと仕事も収入も増えたし、劇場のお客さんが増えてくれたり、NGK(なんばグランド花月)での単独がチケット即完したり。これ絶対『M-1』のおかげなんです。

 ああ、決勝にいくだけが目的じゃないもんやったんだろうなって思いましたね。もちろん優勝を目指す強いエネルギーを出してなければ、こうはならなかったとも思いますけど。

 返ってきたものは『M-1』じゃなかったけど、今の自分らにはこういう形やったんやなと。