1ページ目から読む
3/4ページ目

いじめに対して校長は「嫌がらせではない」「故意ではない」

 2021年11月12日には校長の証言があった。Aさんの死後に実施されたアンケート原本は校長によって破棄された。遺族が個人情報開示請求を求めた際に、「不存在」とされていた。しかし、裁判で、改めて文書の提出のやりとりをしていた際、校長のパソコンに一部が残っていることが明らかになった。自殺後に行われた調査内容の一部に関する写し。都教委の「学校経営支援センター」が教員から聞き取ったもの。A4で60枚。

東京地裁 ©渋井哲也

 そのアンケートを整理した資料について、被告側の弁護人から「どのように作成したものか?」と聞かれ、校長は「全校アンケートの中から、気になる部分をまとめた」とした。つまり、校長の判断で「気になるもの」をまとめた資料だ。しかし、何が“気になるもの”なのかの判断基準は示されず、恣意的なまとめの可能性を払拭する証言はなかった。

「(気になるものは)10点ほどあった。そのアンケートのコピーをとり、気になる箇所にマーカーを引いた。その箇所をまとめたものがその資料です。そして、その回答をした生徒に対して、教員に内容を確認するために聞き取らせた。その内容はコピーにメモをした。メモがない場合は口頭での報告があった。それを受けて一覧表にして打ち込んだもの。アンケート用紙の原本は破棄した」

ADVERTISEMENT

 校長は、こうも述べ、自らアンケート原本を破棄したことも説明した。

 都教育庁はこれまでに、自殺したAさんに関する情報や教育庁が作成した報告書、調査部会の関連資料などを「公文書」とする文書を遺族に示している。公文書は、重要度によって保存期間が定められている。「都文書管理規則」では、保存期間が「1年未満」「1年」「3年」「5年」「10年」「長期」と区分される。文部科学省が作成した「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(2017年3月)では、「指導要録の保存期間に合わせて、少なくとも5年間保存することが望ましい」とされている。

 また、授業中に、教員がAさんの呼び名を何度も間違えたことがきっかけで、部活動のLINEグループで、呼ばれたくない名前で連呼されたことに関連し、校長は、呼ばれたくない名前の連呼行為は「日常的な攻撃」や「嫌がらせ」ではない、とした。さらに、間違えた理由については、「故意ではない。以前に勤務していた学校では、間違えた呼び名のように呼ぶ生徒が多かったため」とした。さらに、校長は、こうも答えた。