小学校2年生になると、沙希は人の家に勝手に上がり込んで『お父さんとお母さんはいない』、『ご飯を食べさせてもらってない』と嘘を言い、ご飯を食べさせてもらっていたことがわかった。しっかり食べさせていたのでショックを受けた。私も当時は若く未熟だったこともあり、急に育児に戸惑いが生まれた。どう育てていいか分からず、沙希に対して感情的になり、腹を立てるように。積もり積もって、言うことを聞かない沙希に、手で顔を殴るなど暴力を振るうようになった。一度や二度ではない……」(梯被告の実母の調書より)
「いろんなところでおしっこやうんちをしてしまう子だったので…」
小学校入学時に梯被告を引き取り、“子育て”を始めた実母。思い通りにならない行動を取る我が子に対して徐々に暴力を振るうようになり、エスカレートしていった。そして夏休みになり、実母が帰宅すると梯被告が台所のお菓子を食べ散らかしていたことから怒りは頂点に。梯被告の頭や顔を手で何度も殴ったほか、当時の夫からも「言うこと聞かんのやったら、縛ればいい」と言われたことから、正座させた梯被告の手や膝をガムテープで縛り、数日放置したという。そして夫婦は梯被告が小学2年生のとき、保護責任者遺棄などで逮捕されることになる。
「いろんなところでおしっこやうんちをしてしまう子だったので、縛られた沙希におしっこやうんちをされて部屋を汚されるのが嫌だった。縛った沙希をゴミ袋に入れ数日間そのままにした。夫は痩せた沙希を見て『難民みたいだ』と薄笑いを浮かべた。夫は沙希を認知してくれた人。その夫を不快にさせる沙希に対して、何してくれてるんだという思いがあった。
沙希を袋に入れて数日経った日、袋におしっこをしたので、お風呂場に連れて行こうとしたが動けず抱えて連れて行った。すると突然刑事が来て、『沙希さんはどこだ、会わせろ』と言った。まずい。沙希は信じられないほど痩せ細り、体には傷やあざが鮮明に残っていた。捕まると思いとっさに『おじいちゃんのところに行ってる』とすぐバレる嘘をついた。やはりすぐバレて逮捕され、沙希は保護された」(同)
被告人質問で梯被告は、当時のことを覚えているかと弁護人に問われ「刺されて、ゴミ袋に入れられて風呂場に投げられたのが最後の記憶……。気づいたら病院でした、そのあと記憶は全然なかった」と答えた。
痩せた体にパンツスーツを着ている被告の髪はウエストあたりまで長く伸びており、逮捕からの日数を感じさせる。同じく伸びきって真ん中分けにされた前髪の隙間から見える目元には、逮捕前にインスタにアップしていたような明るい雰囲気が微塵も残っていなかった。