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《御嶽海大関昇進》「雷電以来227年ぶり」の超パワーワード 「強すぎて張り手禁止」「相手を土俵上で投げ殺した」…? “史上最強力士”との数奇な縁を地元紙はどう報じたか

2022/02/01
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横綱にならなかったのは、“政局”を引き起こさないため?

(1)土俵上で相手を投げ殺した(講談)

(2)雷電を召し抱えた雲州松平家(松江)と相撲の司家を抱える肥後細川家(熊本)など大名家の意地の張り合いに巻き込まれた

(3)品格力量に加えて必要な美的容貌を欠いた

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「(3)はともかく、色々な説があって複雑だが、これという決め手はない」というが、どうやら8代目当主は(2)の説が有力と考えているようだった。

雷電の出身地、長野県東御市に建つ銅像 ©文藝春秋
出生地の長野県東御市にはいまも雷電の生家が残る ©文藝春秋

 つまり雷電は“政局”を引き起こさないよう、横綱にはすすんでならなかったという説である。

 しかし現役時代に10敗しかしていない先人と比較されるなんて御嶽海にプレッシャーはないのか。すると本人は24日の会見で「1年間で10敗だけ負ける力士もいいかな」とお茶目に語っていた。今のところ大丈夫です。

余裕も感じさせるコメントを出す御嶽海 ©文藝春秋

今年の御嶽海は…なんか違う!

 さて郷土力士の報道といえば地元紙の腕の見せどころ。私は長野が故郷なので信濃毎日新聞も読んでいるのですが、信毎を読んでいると場所前から御嶽海に注目せざるを得なかったのだ。

信濃毎日新聞 1月1日付

 元日の紙面を見てみよう。

『勝負の1年 御嶽海、前へ』

 これまではいろいろ考え過ぎたこともあったが前に出る自分の相撲に専念すると誓う。

 御嶽海は優勝2回の実力者なのに「むら」があるのがいまいち突き抜けない要因でもあった。いったん負けだすとズルズルいってしまう。しかし今場所は「気持ちのむらが2桁勝利の足かせとなってきた分、やるべきことだけを考え、いかに気持ちを盛り上げ続けるかも意識している」(初場所2日目を伝える記事・1月11日)。

 お、今年の御嶽海はなんか違うぞ。私だけでなく多くの長野県民は感じたはずだ。そのあとも連勝が続く。信毎の報道をいくつか並べてみよう。

『御嶽海 封じた気の緩み』(3日目・1月12日)

信濃毎日新聞 1月12日付

『御嶽海 集中切らさず』(4日目・1月13日)

『御嶽海、無敗で勝ち越し 諦めず 我慢して見つけた勝機』(8日目・1月17日)

 いかがだろうか。相撲の実力は既にわかっているので注目のメンタル面に焦点を当てている。