金融情勢が変わればマンション相場も木っ端みじんに
そうした働き方の変化は人々のライフスタイルに大きな影響を及ぼす。なぜならば、通勤がマストでなくなれば、何も高いお金をつぎ込んで無理をして都心のマンションを買う必要などないからだ。マネーゲームに興じる投資家たちに、何も今、夫婦ダブルローンを組んでついていく必要などない。投資家は移り気だから、ちょっとでも金融情勢が変われば、あっというまに潮が引くように退散する。当然だがつり上がったマンション相場も木っ端みじんになる。そんなゲームのために自分たちの限られた給料債権を銀行に売り渡すことはいかにも馬鹿馬鹿しい。
それならば、自分の好きな場所、たとえば海の近く、山のふもと、高原。郊外都市で自然が豊かなところ、教育環境が優れた街、自分たちの好みを優先すればよい。価格は都心に比べれば途方もなく安い。東京圏郊外の中古一戸建て。丹念に選べば、1000万円台、2000万円台はいくらでもある。中古マンションなんて数百万円から買える。たまに都心に通勤する程度なら片道1時間以上かかっても、我慢できる範囲内だろう。
多くの人がこうした思考回路を持つようになれば、東京の人口動態は今後さらに転出超が鮮明になるかもしれない。かつてのように、人口の社会減を自然増で埋め合わせるような体力を今の東京は持ち得ていない。2012年以降、東京都は15年を除いて毎年人口は自然減、つまり死亡数が出生数を上回る状況が続いている。多くの女性が東京にやってくるというのに、出生数は伸びない。そのうえ社会減となれば、東京の人口は、減少スピードを速めるだろう。現に先ごろ発表になった東京都の2021年人口は26年ぶりのマイナスを記録している。
これからの東京に求められる新たな機能
すでに東京都の人口は日本人で支えられているわけではない。2014年に39万4千人だった都内の外国人人口は、2020年には57万7千人と激増している。彼らの助けがなければすでに人口はピークアウトしているというのが実態である。
ただし、東京に住む人が減ったとしても、東京は遊びに出かける、学びに行くなどまた新たな顔を持つようになるだろう。だって住宅に多額のおカネを注ぎ込むことが必要なくなれば、その分のおカネを自分の趣味や関心に費やす人が必ず出てくるし、その費やす場として東京の受け皿は機能し続けるはずだからだ。
そうした意味で、東京の人口動態の変化は、単なるコロナ禍による一過性の現象ではなく、ライフスタイルが変化する先駆けを示しているのかもしれない。とするならば、現在のオフィスとマンションばっかりの東京の街の彩がこれからは少し違った色に変わるかもしれない。新しい東京の未来色に期待したいものだ。