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預貯金1114円、借金50万円…“大阪放火犯”から相談を受けた行政書士の告白「もしあの時…」

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トイレさえない、売るに売れない空き家に…

 事実、谷本はもう一つ物件を持っていた。父親から相続した此花区の文化住宅だ。3日後の2月16日、今度は此花区に提出する申請書類を作成。そこにはこう記されている。

〈簡易宿泊所に半年ほど滞在していました。その料金も支払えなくなったことから、トイレさえない、売るに売れない(此花区の)古い持ち家の空き家に2日前に移動してきました〉

放火の現場には消防車など計80台が出動した ©共同通信社

 が、谷本が生活保護を受給することはなかった。府警は「区に却下された」などと説明していたが、

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「実際には、なぜか自ら申請を取り下げたのです。もし多少の家賃収入があったとしても、普段住んでいる賃貸住宅の家賃が支払えないほど困窮していたとすれば、生活保護は受けられたはず。もし、そこで経済基盤が少しでも安定していれば、彼の人生はどうなったのか……」(同前)

 放火現場になったクリニックに通い始めたのは、その翌月のことだった。

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